LUCIO BATTISTI


IL MIO CANTO LIBERO (1972年)

   ルチオ・バッティスティ / イル・ミオ・カント・リベロ
    (NUMERO UNO / BMG ARIOLA PD 74010 / イタリア盤CD)



battisti4.jpg   1: LA LUCE DELL'EST
  2: LUCI - AH
  3: L'AQUILA
  4: VENTO NEL VENTO
  5: CONFUSIONE
  6: IO VORREI... NON VORREI... MA SE VUOI
  7: GENTE PER BENE E GENTE PER MALE
  8: IL MIO CANTO LIBERO







 ヌメロ・ウーノ(Numero Uno)レーベルからの2作目。
 前作『Umanamente Uomo: Il Sogno』では、カンタウトーレ風な部分と昔からのカンツォーネ/シンフォニック・ポップス風な部分が比較的分離して両方存在したけれど、このアルバムでは、シンフォニックな味付けも持ったカンタウトーレ作品として、まとまっているように思います。その分、印象は地味になってしまったかもしれないけど。

 バックには、プログレ・ファンにはおなじみのジャンニ・ダラッリオ(Gianni Dall'Aglio)、トニー・チッコ(Tony Cicco)、マリオ・ラヴェッツィ(Mario Lavezzi)、アルベルト・ラディウス(Alberto Radius)、ガブリエーレ・ロレンツィ(Gabriele Lorenzi)などが、アレンジにはジャン・ピエロ・レヴェルベリ(Gian Piero Reverbeli。この人、表記が Giampiero のときと Gian Piero のときがあるんだけど、どっちが本当なんだろう? もしかして別人!?)がついているけれど、『Anima Latina』のようなプログレッシブな感覚はあまりありません。あくまでも歌ものとして聴くべきでしょうね。

 もちろん、たんなる唄ものにとどまっているはずはなく、ところどころで豊潤な奥行きを感じさせてくれます。
 曲の展開を盛り上げるオーケストレーションも、もちろんそれに貢献しているのですが、しかしそれ以上に、バッティスティの唄自体に厚味があるんですね。
 彼って、決して唄がうまいとは思わないし、唄い方も、感情の限りを吐き出して絶唱するようなタイプではないのですが、何気なく唄っているように聞こえるそのなかに、なぜか説得力があります。

 自分は彼のアルバムは『Amore e Non Amore』『Umanamente Uomo: il Sogno』『Anima Latina』『e Gia』と、この『il Mio Canto Libero』の5枚しか聴いたことがないのだけど、このアルバムは、もっともカンタウトーレらしいアルバムです。
 アコースティックな印象も強く、力強さとか躍動感はあまりないけれど、おだやかで、明るい陽射しが似合う、とても優しいアルバムだと思います。派手なところはないけれど、いつだって温かく自分を迎えてくれるような、そんな居心地のよさがあります。

 最近のイタリアン・ポップス・ファンには地味すぎるかもしれない、プログレ・ファンには歌ものすぎる ── いったい誰が聴くのがいちばん幸せなんでしょう? やっぱり、カンタウトーレ・ファンが聴くべきなんでしょうね。あるいは、フォルムラ・トレの『la Grande Casa(神秘なる館)』が大好きなので自分はプログレ・ファンなんだと思うんだけど、その他のプログレがいまひとつうまくはまらない、という人とか。

 カンツォーネよりあとのポップスとしてはオールド・スタイルなものだけれど、やっぱりこういうのが原点な気がします。シンプルだけど、長くイタリアのポピュラー・ミュージックを聴いている人なら、きっと心引かれるところのあるアルバムではないでしょうか。

(1998.09.27)








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