MARCO MASINI


T'INNAMORERAI (1993年)

   マルコ・マジーニ / ティンナモレライ
    (DISCHI RICORDI TCDMRL 6459 / イタリア盤CD)




masini1   1: VAFFANCULO
  2: T'INNAMORERAI
  3: CANTANO I RAGAZZI
  4: PAURA D'AMARE
  5: DIO NON C'E
  6: LA LIBERTA
  7: VOGLIO VOLARE
  8: ANNA VIVIAMO
  9: UN PICCOLO CHOPIN







 日本盤が出たこともあるマルコ・マジーニ。一部ではとても人気があるシンガー(ソングライター?)みたい。

 ダミ声(なぜイタリアにはダミ声シンガーが多いのだろう?)でチカラいっぱい熱唱するスタイルは、典型的なイタリアン。どちらかというと暑苦しいタイプだけれど、たとえばむかしのリッカルド・コッチャンテ(Riccardo Cocciante。いまもあいかわらず熱唱型なんでしょうか?)とかが好きな人なら、これこそイタリアだよなぁと思えるはず。

 若い情熱がほとばしるかのような唄を、大掛かりなオーケストラやコーラスがバックアップする。非常にスケールが大きいというか、大仰なアレンジと、それが似合うメロディラインを持っている。
 先日はじめて聴いたウンベルト・ビンディ(Umberto Bindi)のアルバムも、壮大なスケール感のあるものだったけど、ビンディのスケール感が映画のサントラふうだったのに対し、マジーニのスケール感は、むかしのイタリアン・ロックやカンタウトーレが持っていたものに近い感じがする。たとえばチコ(Cico)とか初期のコッチャンテのような、どことなくプログレな匂いを持っている。

 ライト・ミュージックとしてのポップスを好む人にとっては、熱すぎるというか、重すぎるというか、通して聴くと疲れてしまうかもしれない。
 決してロックではないし、メロディ・ラインもとても美しい。静かなバラードもある。けれど、出し惜しみということを知らないかもしれない(^^;)バックと、力強いマルコの声が、大きな感情の固まりをどんどん、こちらに投げてくる。
 でも、この力強さ、感情のほとばしり、そしてそれを増幅する美しいメロディとアレンジこそが、イタリアン・ポップス/カンタウトーレのもっともおいしいところ、心引き付ける部分ではないか。

 非常に濃ゆいイタリアンだと思う。そういう意味では、初心者向けではないかもしれない。あるいは、濃ゆさがわかりやすいので、イタリアンを感じるという意味では、初心者向きなのかもしれない。
 自分は、とても楽しめる。比較的最近(ということもないか)の歌手だけど、カンタウトーレの世界を知ったばかりで、雑誌『マーキー』の記事などを元にアルバムを探し、聴いていたころを思い出させるような、懐かしさを感じる。

 イタリアン・プログレ・ファン出身のカンタウトーレ・ファンが、もっとも愛せるタイプの曲かもしれない。
 思想的・技術的にむずかしいプログレと、軽すぎるポップスのあいだを埋めるもの。プログレのスタイルがもっていたドラマティックさを、上手にポップスに引き入れたもの。そして、イタリア的であることを、歌声にもメロディにも充分に盛り込んであるもの。
 “イタリアな音楽”ファンなら、きっと心に引っかかるでしょう。

(1998.05.09)








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