MATIA BAZAR


ANIME PIGRE (1992年)

   マティア・バザール / 怠惰な魂たち
    (BMG VICTOR BVCP-179 / 日本盤CD)



jacket photo  1: VOLO ANCH'IO
   僕も翔ぶ
 2: SOLI CI SI PERDE
   ひとりじゃ迷ってしまう
 3: LUNGO IL PO
   ポー川に沿って
 4: DU DU DU
   ドゥ・ドゥ・ドゥ
 5: SEI COME ME
   あなたは私のようで
 6: FANTASMI DELL'OPERA
   オペラ座の亡霊たち
 7: C'ERA UNA VOLTA
   むかしあるところに
 8: UN CUORE IN GIOCO
   賭けられた心
 9: SI PUO' RICOMINCIARE
   もう一度やり直せる


LAURA VALENTE: voce
ALDO STELLITA: basso
CARLO MARRALE: voce, chitarre
GIANCARLO GOLZI: batteria, percussioni
SEGIO "SERGHEIJ" COSSU: tastiere

prodotto e arrangiato da MAURIZIO BASSI
produttore esecutivo: MAURIZIO SALVADORI







 Matia Bazar(マティア・バザール)にはデヴュー以来、Antonella Ruggiero(アントネッラ・ルッジェーロ)というきわめて個性の強い歌姫がいて、彼女のキラキラとして伸びやかなヴォーカルはグループの最大の売り、ある意味ではMatia Bazarそのものだったといえます。
 そもそもMatiaというのはAntonellaの愛称ですから、Matia Bazarというグループ名から、Matia(Antonella)を売り出すための媒体としてグループが結成されたのではないかと想像できます。

 イタリアン・ポップス界の逸材といえるAntonellaがグループを去り、新ヴォーカリスト、Laura Valente(ラウラ・ヴァレンテ)を迎えての最初のアルバムが、この『Anime Pigre』です。聴く前は、AntonellaがいないMatia Bazarなんて……と思っていたこのアルバムですが、なかなかどうして、ちゃんとMatia Bazarの音楽になっています。

 Antonellaほどの存在感やダイナミックさはないものの、Lauraも伸びやかで奥行きのある歌声を聴かせる、なかなか力量のあるヴォーカリストです。
 新加入後1作目のアルバムということで、意識してそうしているのかもしれませんが、ところどころでAntonellaばりの張りのある声を聴かせてくれます。音程や声量も安定していて、新加入を感じさせない落ち着きもたたえ、加入後1作目にしてすでにグループに溶け込んでいます。

 急激な場面展開をものともしないAntonellaが歌っていたころにくらべると、メロディの流れ自体は、よりなめらかになっています。Lauraのヴォーカルも、こうしたなめらかなメロディのほうが似合うようです。
 その点で、以前のMatia Bazarの音楽よりは、よりオーソドックスなイタリアン・ポップスになっているような印象も受けます。それでも、イタリアらしいキラメキと輝きを内包したその音楽は、やはりMatia Bazarの音楽です。

 Matia Bazarはこれまで、初期のポップ・ロックからエレ・ポップ、そして華麗なアーティスティックさを感じさせる都会的ポップスへと、その装いを何度か変えてきました。でも、どんな音楽を奏でても、そこには必ずMatia Bazarらしさがありました。初期の主要メンバーだったPiero Cassano(ピエロ・カッサーノ)が辞めるなどのメンバー・チェンジがあり、曲づくりや音づくりの主導権が移動しても、Matia Bazarの音楽はMatia Bazarの音楽でした。
 それはきっと、Antonellaという強力なフロント・パーソンの個性が、Matia Bazarらしさの象徴になっているからなのだろうと思っていました。しかし、ヴォーカリストがLauraに代わっても、Matia Bazarの音楽はやはりMatia Bazarの音楽でした。そして2000年にはさらにヴォーカリストがSilvia Mezzanotte(シルヴィア・メッザノッテ)に代わりましたが、その年のサンレモ音楽祭に参加した彼らの音楽は、やはりMatia Bazarの音楽でした。

 Matia Bazarを構成する要素が変わっても、基本となるMatia Bazarのよさは変わりません。それはやはり、彼らの生み出すメロディの美しさ自体にMatia Bazarらしさがあるからなのでしょう。
 それゆえ、このアルバムもMatia Bazarの作品として、ファンの心を揺さぶり、優しく語りかけ、イタリアの明るい陽射しとさわやかな哀愁で満たしてくれるのです。

(2000.06.17)








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