produzione: Guido Bellachioma
Jimmy Spitaleri: voce
Enrico Olivieri: tastiere, pianoforte
Leonardo Gallucci: basso, chitarra classica
Fabio Moresco: batteria
Marco Maracci: tastiere
Claudio Bartolucci: percussioni
1970年代に2枚のアルバムをリリースしたMetamorfosi(メタモルフォシ)の、およそ30年ぶりになるサード・アルバム。奇跡の復活、奇跡のリリース!? 前作『Inferno(地獄)』はダンテの『神曲』の地獄編をテーマにしたコンセプト・アルバムだったそうで、今回の『Paradiso(天国)』はやはり『神曲』から天国編をテーマにしたコンセプト・アルバムだそうです。30年のときを経て、アルバム・コンセプトが引き継がれています。
Metamorfosiの『Inferno』、けっこう好きで、むかしはよく聴きました。どこかBanco del Mutuo Soccorso(バンコ・デル・ムトゥオ・ソッコルソ)を思わせるような、よく通るオペラチックなヴォーカルや、ドラマティックかつ邪悪な雰囲気を撒き散らすキーボード群、1970年代イタリア独特のばたばたとしたリズム。そして、それら全体をうす〜く包み込んでいたくすんだ感じ。いかにもイタリアン・プログレッシヴという感じでした。
21世紀のMetamorfosiにも、こういった感じは引き継がれています。引き継がれていますが、もうひとつ強く心に入ってこないのは、自分が年をとって変わってしまったからでしょうか。それとも、変わることを拒んでいるから?
ピアノの音に艶と奥行が感じられません。奏でるメロディやフレーズはイタリアンなのに、音色がかさかさ。現代的なすっきりした音色のキーボード群も、聞きやすく耳あたりがいいのだけど、Metamorfosiの持っていた熱い情念のような部分が薄まった気がします。そして、はっきりすっきりしたキーボード群が全体を支配していることで、ヴォーカルがキーボードのなかに埋没し、相対的な力関係が弱まっているように感じてしまいます。ヴォーカルに特徴と魅力があるグループだと自分は思っているのですが、その点で残念です。
前作はコンセプトが地獄で、今回はコンセプトが天国なので、前作のような邪悪さ加減があまり感じられないのは、当然といえば当然なのかもしれません。ただ、自分にとってのMetamorfosiはやっぱり『Inferno』で、くすんだ薄もやの向こうに邪悪で怪しいうごめきがあり、そのなかに聖性と邪性のどちらにも転びそうな美しい声のヴォーカルという印象なんです。
その点からすると今作は、あまりにすっきりはっきり。演奏テクニックなどに衰えは感じないし、曲もドラマティックによくできているけど、『Inferno』が持っていた魂の迫力とそれに支えられた力強さといったものがあまり感じられません。よい楽曲と上手な演奏なんだけど、その先にあるもの、あるいはそのもとにあるものが、ちょっと弱いかなぁ。
多くのプログレッシヴ・ファンのみなさん、Metamorfosiファンのみなさんのあいだではとても評価が高い作品なので、自分ももっと聴きこむ必要があるとは感じているのですが、どうしても聴きこみたいという欲求を抱かせるまでにはいかない。そんな感じです。