MARIO PANSERI


ADOLESCENZA (1973年)

   マリオ・パンセーリ / 秘められた記憶
    (BMG VICTOR / EDISON EUROPEAN ROCK SERIES ERC-28019 / 日本盤CD)



jacket photo  1: IN QUESTA TUA STAGIONE
    貴女の季節
 2: LA TUA CASA
    家
 3: E NON SAI...
    迷路
 4: AL MARE
    海の果て
 5: a) VICINO ALLA MAMMA
     隣人
   b) DELUSIONE
     失望
 6: a) IL PRIMO AMICO
     初めての友達
   b) VOLTO DI DONNA
     貴女の横顔
 7: LA TUA CONFUSIONE
    苦悩
 8: QUEGLI OCCHI SPALANCATI
    神秘の瞳
 9: NON SEI PIU' QUEL BAMBINO
    消えた子供


testi e musiche di MARIO PANSERI
arrangiamenti di MARIO PANSERI
realizzazione di Rodolfo Bianchi
produzione: V. Micocci







 このCDが、いまはなき東京・新宿の輸入盤店「エジソン」企画のユーロピアン・ロック・シリーズ・カンタウトーレ編として国内リリースされたのは、もう、ずいぶんむかしのことになります。
 当時は、いま以上にイタリアのポピュラー・ミュージックに関する情報が日本にはなく、かろうじてプログレッシヴ・ロック系の情報のみが熱心なファンによって紹介されているような状況でした。歌ものに関する情報は、1970年代前半より以前の、カンツォーネの時代のものくらいしかなかったように思います。

 当時、イタリアン・プログレッシヴを愛聴していたファンに、イタリアの歌もの、カンタウトーレ作品を紹介した、エジソンのこのシリーズやキングレコードのカンタウトーレ・シリーズなどは、いまから思えばとても貴重で、またメーカーにしてみれば大きな冒険だったのでしょう。
 すでに固定ファンをつかんでいたプログレッシヴ・ロックというジャンルから少しはみ出してはいるけれど、ロックを含むイタリアン・ポピュラー・ミュージックのベースにある歌もの、カンタウトーレを紹介したいという、イタリアン・ミュージックに対する愛情が強く感じられる企画でしたが、セールス的には失敗だったようです。

 エジソンやキングレコードのこれらのシリーズは、プログレッシヴ・ロック側からのセレクションだったため、歌もの、カンタウトーレとはいっても、プログレッシヴ的な要素の強いものが中心に国内リリースされました。
 しかし、プログレッシヴ・ロックのファンは、やはりプログレッシヴ・ロックのほうが好きなんだろうと思います。イタリアの歌ものをきちんと紹介するのであれば、やはり歌ものファン、カンタウトーレ・ファンのためのセレクションが必要だったのではないでしょうか。

 とはいえ、いま以上にイタリアの歌ものを聴く日本人が少なかった当時の戦略としては正解だったし、それ以外にはありえなかったともいえそうです。ただ、そのころの「マイナスの記憶」に、いまでもレコード会社がとらわれているように感じられ、それが残念です。
 そろそろ、プログレッシヴ・ファンのためでも、大昔のカンツォーネ・ファンのためでもない、若いイタリアン・ポップス・ファンのための国内リリースを、戦略を持ってやってほしいものです。

 さて、けっして恵まれていたとはいえない状況下で日本盤がリリースされたMario Panseri(マリオ・パンセーリ)のこの作品も、シンフォニックな味付けがされた、プログレッシヴ・テイストなアルバムです。
 しかし、このアルバムの本質は、プログレッシヴなアレンジや演奏にあるのではなく、おだやかで憂いを秘めた、語りかけるようなヴォーカルにあるといえるでしょう。美しく、シンフォニックで、クラシカルな演奏は、Marioの歌をより効果的に響かせるためにあるのです。
 その意味で、このアルバムはプログレッシヴ作品ではなく、やはりカンタウトーレ作品だと思います。

 弱々しげで幻想味を持った歌、おだやかなメロディとオーケストレーションは、イタリア歌ものの情感にあふれています。ヴォーカリストとしてはけっしてうまいとか声量があるとはいえませんが、イタリアならではのやわらかさと暖かさに満ちています。多少ハードな演奏が聴かれる部分もありますが、全体的には淡い色彩に彩られています。
 普通のイタリアン・ポップスを聴く人が増え、また若いときにロック・ムーヴメントを通り抜けてきた人が多くなっているいまのほうが、このアルバムを楽しめる“ポップスのファン”は多いのかもしれません。

(2001.02.18)








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