Nico Di Paro: guitar, vocal
Vittorio De Scalzi: guitar, vocal
Maurizio Salvi: keyboard
Frank Langelli: bass
Gianni Belleno: drums
LP時代はスタジオ収録のディスク1とライヴ収録のディスク2の、2枚組でリリースされていました。CDでは1枚に収められています。
名作と名高い『Concerto grosso per I』と『UT』のあいだに、しかも『UT』と同じ年にリリースされてしまい、そのうえ歌詞が英語ということもあってか、2枚組というボリュームのある作品でありながら、あまりぱっとしない印象のアルバムですが、なかなかどうして、味わい深いものになっています。
オーケストラ入りの『Concerto grosso per I』や派手な『UT』などにくらべるとインパクトは弱いのですが、これらの「いかにもイタリアな感性と情熱」とはちょっと違った、どちらかというとイギリスのプログレッシヴ・ロックに近い匂いを、自分はこの作品に感じます。もちろんイタリアの香りもあるのだけど、それだけでなく、イギリス風の、おだやかで、余裕があって、少しユーモラスな部分やイタズラっぽい感じもあったりして、どことなくCaravan(キャラヴァン)などのカンタベリー系音楽を思い出したり。あるいは、のちのIbis(イビス)へと通じる匂いを感じたり。
2006/2007年の来日公演でも演奏された「In St.Peter's Day」は、やっぱり美しい曲ですね。後半のとってつけたようなキーボードのシンフォニック・アレンジが当時の「プログレやるぞ!」的な気分を端的に表わしているような気がしますが、個人的には唐突すぎてバランスが悪いように感じます。
他の曲も、どれも派手さはあまりないものの魅力的です。ほどよくジャジーで、ほどよくシンフォニックで、ほどよくフォーキー。コントラストの強いイタリアの風景よりは、うっすらと靄がかかったイギリスの風景が思い浮かびます。あと、全編を通してギターのアルペジオの美しさが印象に残りました。
New Trolls(ニュー・トロルス)やイタリアン・プログレッシヴ・ロックのコアなファンなら聴かずにおくのはちょっともったいない、なかなかの名盤だと思います。