PAOLO FRESCURA


PAOLO FRESCURA (1978年)

   パオロ・フレスクラ
    (RCA / SI-WAN RECORDS SRMWP 1006 / 韓国盤CD)



frescura1.jpg   1: SCEMA
  2: RICORDARMI
  3: NON SERVE A NIENTE
  4: INNAMORATA MIA
  5: DOPO UN GRANDE AMORE
  6: MI SEMBRA UN FILM
  7: CANTO D'AMORE PER ANNA
  8: E ANCORA MI DOMANDO
  9: LUI
 10: ROSA ROSA







 パオロ・フレスクラは、少なくともこのアルバムの前に2枚のアルバムがあるんだそうです。残念ながら自分は聴いたことがありません。

 このアルバムは、プログレ・ファンのあいだではけっこう有名なアルバムだそうです。なぜなら、キーボードで参加してるのが、ルイス・エンリケス・バカロフ(Luis Enriquez Bacalov)、チロ・ダッミッコ(Ciro Dammicco)、クラウディオ・シモネッティ(Claudio Simonetti)だからです。
 バカロフといえばニュー・トロルス(New Trolls)やオザンナ(Osanna)、イル・ロヴェスチオ・デッラ・メッダリア(il Rovescio della Medaglia)のアルバムでのバロック・アレンジが有名です。ダッミッコは72年に出したソロ・アルバムがメロトロン・アルバムとして有名です。シモネッティはもちろん、ゴブリン(Goblin)ですね。

 でも、そんなことは忘れてください。ここでの主役は、あくまでもパオロです。もちろん彼らのサポートも素晴らしいのですが、それ以上に、パオロの“唄”が素晴らしいんです。

 パオロは、イタリアによくいるダミ声タイプのシンガーではありません。もっと素直で、丸みと暖かみのある歌声を持っています。
 ベタつき、しつこさ、押し付けがましさ──そんなものとは無縁です。繊細で優しく、瑞々しいのです。そして、緑の大地を愛でるかのような、素朴な心を感じます。

 もちろん、いかにもイタリア的な哀愁・感傷を持ったバラードもあります。そういう曲では、多少古臭い印象を持ってしまうかもしれません。しかし、メロディの美しさは、やはりイタリアです。
 彼のバラードには、たとえばクラウディオ・バッリォーニ(Claudio Baglioni)やマルコ・マジーニ(Marco Masini)などのような、気持ちの限りをぶつけるような力強さはありませんが、まじめに唄いあげるその声には、むか〜しの青春映画を見ているような、どこか恥ずかしいほどのストレートな愛を感じます。

 これらのバラードも魅力なのですが、シンプルなアコースティック・ギターにのせて唄われる明るいフォーク・タッチの曲も、じつは大きな魅力だったりします。
 どうしても哀愁もの的な印象が強くなりがちですが、そのなかに含まれるフォークっぽい曲がアクセントとなり、たんなる哀愁一辺倒なアルバムになるのを防いでいます。
 牧歌的というか、素朴な感じの曲と声が、たとえば草原でちょうちょを追いかけているような、あるいはそんな少女を遠くから見守っているような、そんな和やかさを運んできます。

 もちろんロック・アルバムではありません。ではカンタウトーレ的なアルバムかというと、それよりも劇伴風というか、歌謡曲的といったほうが、もしかしたら近いのかもしれません。
 きちんと作り込まれた楽曲とアレンジに、パオロの優しい声が乗る──人によってはぜんぜん面白くない、いまさらこんなタイプの曲は流行らない、などと思う人もいるかもしれません。でもね、非常にイタリアらしい音楽のひとつだと思うんです、これって。

 心が疲れているとき、いろいろなことが嫌になっているときなど、すっと心の隙間に入り込んできて、そっと揉み解してくれるような、そんなアルバムです。
 そして、他のアルバムがどんな感じなのか、とても気になるカンタウトーレです。

 ちなみに自分、これを聴いてたら、フランコ・シモーネ(Franco Simone)の『VOCEPIANO』というアルバムを思い出しました。
 これもまた、心に優しい、いいアルバムですよ。


(1998.06.14)








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