1: SCEMA
2: RICORDARMI
3: NON SERVE A NIENTE
4: INNAMORATA MIA
5: DOPO UN GRANDE AMORE
6: MI SEMBRA UN FILM
7: CANTO D'AMORE PER ANNA
8: E ANCORA MI DOMANDO
9: LUI
10: ROSA ROSA
パオロ・フレスクラは、少なくともこのアルバムの前に2枚のアルバムがあるんだそうです。残念ながら自分は聴いたことがありません。
このアルバムは、プログレ・ファンのあいだではけっこう有名なアルバムだそうです。なぜなら、キーボードで参加してるのが、ルイス・エンリケス・バカロフ(Luis Enriquez Bacalov)、チロ・ダッミッコ(Ciro Dammicco)、クラウディオ・シモネッティ(Claudio Simonetti)だからです。
バカロフといえばニュー・トロルス(New Trolls)やオザンナ(Osanna)、イル・ロヴェスチオ・デッラ・メッダリア(il Rovescio della Medaglia)のアルバムでのバロック・アレンジが有名です。ダッミッコは72年に出したソロ・アルバムがメロトロン・アルバムとして有名です。シモネッティはもちろん、ゴブリン(Goblin)ですね。
でも、そんなことは忘れてください。ここでの主役は、あくまでもパオロです。もちろん彼らのサポートも素晴らしいのですが、それ以上に、パオロの“唄”が素晴らしいんです。
パオロは、イタリアによくいるダミ声タイプのシンガーではありません。もっと素直で、丸みと暖かみのある歌声を持っています。
ベタつき、しつこさ、押し付けがましさ──そんなものとは無縁です。繊細で優しく、瑞々しいのです。そして、緑の大地を愛でるかのような、素朴な心を感じます。
もちろん、いかにもイタリア的な哀愁・感傷を持ったバラードもあります。そういう曲では、多少古臭い印象を持ってしまうかもしれません。しかし、メロディの美しさは、やはりイタリアです。
彼のバラードには、たとえばクラウディオ・バッリォーニ(Claudio Baglioni)やマルコ・マジーニ(Marco Masini)などのような、気持ちの限りをぶつけるような力強さはありませんが、まじめに唄いあげるその声には、むか〜しの青春映画を見ているような、どこか恥ずかしいほどのストレートな愛を感じます。
これらのバラードも魅力なのですが、シンプルなアコースティック・ギターにのせて唄われる明るいフォーク・タッチの曲も、じつは大きな魅力だったりします。
どうしても哀愁もの的な印象が強くなりがちですが、そのなかに含まれるフォークっぽい曲がアクセントとなり、たんなる哀愁一辺倒なアルバムになるのを防いでいます。
牧歌的というか、素朴な感じの曲と声が、たとえば草原でちょうちょを追いかけているような、あるいはそんな少女を遠くから見守っているような、そんな和やかさを運んできます。
もちろんロック・アルバムではありません。ではカンタウトーレ的なアルバムかというと、それよりも劇伴風というか、歌謡曲的といったほうが、もしかしたら近いのかもしれません。
きちんと作り込まれた楽曲とアレンジに、パオロの優しい声が乗る──人によってはぜんぜん面白くない、いまさらこんなタイプの曲は流行らない、などと思う人もいるかもしれません。でもね、非常にイタリアらしい音楽のひとつだと思うんです、これって。
心が疲れているとき、いろいろなことが嫌になっているときなど、すっと心の隙間に入り込んできて、そっと揉み解してくれるような、そんなアルバムです。
そして、他のアルバムがどんな感じなのか、とても気になるカンタウトーレです。
ちなみに自分、これを聴いてたら、フランコ・シモーネ(Franco Simone)の『VOCEPIANO』というアルバムを思い出しました。
これもまた、心に優しい、いいアルバムですよ。