PREMIATA FORNERIA MARCONI


JET LAG (1977年)

   プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ / ジェット・ラグ
    (BMG FUNHOUSE: BVCM-37591 / 日本盤CD)



jacket photo
  1. PENINSULA
  2. JET LAG
  3. STORIA IN "LA"
  4. BREAKIN IN
  5. CERCO LA LINGUA
  6. MERIDIANI
  7. LEFT-HANDED THEORY
  8. TRAVELER


Franzi Di Cioccio: batteria, percussioni
Franco Mussida: chitarre
Patrick Djivas: basso, moog b12
Bernardo Lanzetti: voci, percussioni
Flavio Premoli: piano, organo, moog
Gregory Bloch: violino








Premiata Forneria Marconi(プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ。PFM)のこのアルバム、学生時代にLPを買って持っているのだけど、ほとんど聴いたことがありません。今回、中古で安くCDが売っていたので購入し、ほんとにひさしぶりに聴いたのだけど、どの曲も記憶にないというか、聴いてもぜんぜん思い出せない。そんなわけで、ほとんど初めて聴いたに等しい感じです。

それでも演奏が始まると「あ、PFMだ」と感じさせるあたり、やはり彼らはすごいですね。楽器の音づくりとアンサンブル・アレンジに特徴があるのかな。テクニカルなんだけど、どこかおおらかなところもあって、独特の澄んだ明るさが感じられます。

ただ、PFMって基本的に、あまり歌メロを重視してないんじゃないかなぁと感じるのですよ。『Chocolate Kings』からせっかくBernardo Lanzetti(ベルナルド・ランゼッティ)という選任ヴォーカリストをメンバーに加えたのに、ヴォーカリ・オリエンテッドな要素が多少なりとも強まったかというと、そんなことはないわけで、ヴォーカルがなければないでも成立してしまうような楽曲がほとんどのように思えるのですわ。あいかわらず。そのあたりがたぶん、自分があまりPFMに興味を持てない大きな理由のひとつなのだろうな。

Bernardoの独特な個性を持ったヴォーカル・スタイルはPFMファンにあまり評判がよくないようですが、自分はけっこう好きなのです。ヴォーカリストはやはり、歌声で主張するわけですから、個性とかユニークさとかがないと。そこがアンサンブル志向のPFMにはうまくマッチしていないともいえるかもしれませんが、あれだけの芸達者がそろった演奏陣には、このくらいの個性のあるヴォーカルじゃないとバランスが取れないと自分には思えるのです。

だけど、せっかくのユニークなヴォーカリストを「活かす」ような曲が、PFMにはあまり(ほとんど?)ないのですよね。それでもBernardo参加1作目の『Chocolate Kings』では彼の歌を上手に活かしつつ演奏も炸裂、といった印象もあったのですが、この『Jet Lag』では彼ら本来の?インスト志向がまた強くなってしまい、ヴォーカルは添え物的というか、アンサンブルのなかの1パートになってしまったように感じます。そこが、ヴォーカル・ファンの自分としては残念なところです。

なんかPFMって、演奏とヴォーカルのバランスを取るのがあまりうまくないような感じがするんですよね。演奏陣は強力なのにヴォーカリストが貧弱とか(そもそも選任ヴォーカリストがいないですし)、強力な選任ヴォーカリストを置いてもそれを活かせる歌メロをつくれないというか、歌メロと演奏のバランスが悪いというか。たとえばFabrizio De Andre'(ファブリツィオ・デ・アンドレ)とのライヴ盤は、きちんとした歌メロがつくれて、個性的な歌声も持っているFabrizioのバックを、演奏家・アレンジャーとして超優秀なPFMが務めたことで、非常に素晴らしいアルバムになっていると感じるのですが、逆にいえば、PFMのなかにFabrizioに相当する人がいない、というのが、自分の好みからするとかなり大きな彼らの弱点なのだな。

とはいえ、演奏はあいかわらずめちゃめちゃうまくて、インストゥルメンタル志向のジャズ・ロック系プログレッシヴ・ロックなどが好きな人には充分満足の内容じゃないかと思います。アルバム冒頭で聞かれるFranco Mussida(フランコ・ムッシーダ)のアコースティック・ギター・ソロ曲には南イタリアを思わせるキラキラとした太陽の輝きなどが思い浮かべられ、とても魅力的です。彼らのアルバムのなかではもっともアメリカ志向が強い作品といわれているようですが、それでも演奏の端々にイタリアらしい輝きがあって、やはりPFMはPFMなのだなぁと感じます。

(2006.07.22)







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