PREMIATA FORNERIA MARCONI


DRACULA - OPERA ROCK (2005年)

   プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ / ドラキュラ - オペラ・ロック
    (MUSIZA/SONY BMG MUSIC ENTERTAINMENT: 82876723062 / EU盤CD)



jacket photo
  1. OUVERTURE
  2. IL CONFINE DELL'AMORE
  3. NON E' UN INCUBO E' REALTA'
  4. IL MIO NOME E' DRACULA
  5. IL CASTELLO DEI PERCHE'
  6. NON GUARDARMI
  7. HO MANGIATO GLI UCCELLI
  8. TERRA MADRE
  9. MALE D'AMORE
  10. LA MORTE NON MUORE
  11. UN DESTINO DI RONDINE


Franz Di Cioccio: voce, batteria, percussioni
Patrick Djivas: basso
Franco Mussida: chitarre, voce
Flavio Premoli: tastiere, voce

direzione d'orchestra: Natale Massara
orchestra: Bulgarian Symphony Orchestra

cori: S.A.T. & B. di Maria Grazia Fontana
voce: Dolcenera
chitarra: Stefano Xotta

prodotto da: Rebecca Huner
produzione artistica: PFM
musiche: PFM
liriche: Vincenzo Incenzo








自分はMauro Pagani(マウロ・パガーニ)が抜けたあとのPremiata Forneria Marconi(プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ。PFM)のアルバムをほとんど聴いたことがなくて、そのせいもあるのかもしれませんが、このアルバム、PFMだと知らずに聴いたなら、きっとPFMのアルバムとは気づかなっただろうなと思います。

タイトルどおり、吸血鬼ドラキュラをテーマにしたロック・オペラのサウンドトラックです。歌詞はVincenzo Incenzo(ヴィンチェンツォ・インチェンツォ)という人が書いていますが、曲はPFMによるもの。しかしここに、自分の知っている「PFMの音」はほとんど出てきません。

個人的な印象として、PFMの音楽って、どちらかというと軽やかで、華麗で、たとえ哀愁系の曲をやったとしてもどこかに太陽の光を反射するキラキラとした海の輝きが垣間見え、テクニカルであってもあたたかみのある演奏をする、と感じているのですが、このアルバムには、そういった要素がほとんど感じられません。M5「Il castello dei perche'」の中間部でいくらか聴かれるくらいでしょうか。

まぁ、テーマがドラキュラですからね。ドラキュラ(のモデルとなったブラド・ツェペシ伯爵)といえば東欧ルーマニアはトランシルヴァニア地方の出身です。そんなこともあってか、PFMなのにすごく音が重い。そして、暗い。こういった重厚な感じのする音楽はいかにもユーロ・ロック的ではありますが、PFMからこういう音が出てくるとは、自分は想像してませんでした。しかし、M3「Non e' un incubo e' rearta'」で聞こえるサンプリングのフルートは、しょぼいな。

そのうえ、この作品はロック・オペラです。PFM単体の作品とは違います。舞台用音楽らしく、ドラマティックでスリリングなオーケストラがふんだんに導入され、音楽に厚みと物語性をたっぷりと加えています。さらには混声合唱まで入ります。こういった厚みも、自分の持っているPFMの印象とずいぶん違います。PFMで混声合唱といえば「The mountain」という曲もむか〜しにありましたが、あんなふうなとってつけたような混声合唱ではなく、この作品中ではもっとスムースに取り入れられています。

そんなわけで、実はあんまりPFMの音楽に興味がない自分ですが、このアルバムはなかなか聴きどころが多いというか、けっこう自分の好みにあった内容になっています。

ただ、毎度のこと?なのですが、これだけ厚みと密度のある演奏だし音楽なのに、ヴォーカルがパワー不足なのですよ。これについては自分がPFMに対して持っている印象そのままです。

曲ごと(役ごと?)にメンバーが交代で歌っているようで、それぞれの歌声はそれなりに個性もあるし味わいもあるとは思うのだけど、しかもPFMにはめずらしいメンバーによるコーラス・ワークもあったりするのだけど、なんといってもこれは壮大なロック・オペラです。ここはもっと声量のあるヴォーカルで、力強く伸びやかな歌声を聴きたかった。せっかく演奏で重厚なドラキュラの世界をつくりあげているのに、ヴォーカルがその重厚さを薄めてしまっているように感じるのです。これがドラキュラではなく、ロック・オペラでもなく、PFM単体のオリジナル・アルバムであれば、このヴォーカルでも充分なのでしょうが。M11「Un destino di rondine」にゲスト・ヴォーカルとして参加しているカンタウトリーチェ、Dolcenera(ドルチェネラ)の力強いヴォーカルがヨーロッパの陰鬱な世界観にぴったりとあっている分、余計に本編でのヴォーカルの甘さが残念に感じられます。

というわけで、ヴォーカル面での物足りなさはいくらか残りますが、アルバム全体としてはいかにもユーロ・ロック的な、ヨーロッパ的な影と哀しみと重さに満ちた、なかなかの作品だと思います。これがPFMファンにどう受けとめられるのかはわかりませんが。ちなみに自分は、このアルバムを聴いて、PFMやその他のユーロ・ロック・グループよりも先に、Cirque du Soleil(シルク・ドゥ・ソレイユ)のアルバム『Alegria』を思い出しました。古いヨーロッパのひなびた街角を思い起こさせるところなど、ちょっと通じる部分があるのではないかしら。

(2006.07.22)







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