シンセサイザーの導入のしかたがどことなくプログレッシヴ・ロック風な「La mela in tasca」で幕を開けるこのアルバム。なんとなく全体にシンセサイザーの使い方がVangelis(ヴァンゲリス)っぽい感じがするのですが、M4「Sconosciuti cieli」がJon Anderson(ジョン・アンダーソン)&Vangelisの曲である以外、とくにアレンジや演奏にVangelisがかかわっているわけではないようです。
そのM4は、いかにもJon & Vangelis風というか、大きなメロディを持ったゆったりした曲で、個人的にはちょっと眠たくなってしまいます。
Patty Pravo(パッティ・プラーヴォ)って、低くてドスのきいた声に個性があり、この声を活かしたパワフルなロック・ヴォーカリストのようなイメージが自分にはあるのですが、このアルバムに収録されている曲は、けっこうなめらかなメロディを持ったイタリアン・ポップスが中心です。ただ、声の存在感はあいかわらずで、そのために、優しい感じの曲にも重厚さと力強さが感じられます。
M6「Dirin din din」などは、歌う人によってはさわやかで可愛らしい女性ポップスになると思うのですが、Pattyが歌うとそこにある種の妖しさが生まれ、ありきたりなポップスにはなりません。
おおらかでスケール感のあるメロディを持ったM7「Tutto il mondo e' casa mia」もいい感じの曲。古いイタリアン・ポップスのメロディといえばそれまでですが、節度のあるオーケストレーションや甘いサキソフォンの響き、そしてアコースティック・ギターとエレキ・ギターの音色が、曲にふくらみを与えています。
M8「Il dottor funky」はマンドリンの可愛らしい響きが魅力的。演奏はフォーク風だけどメロディはイタリアンなポップスという組み合わせが楽しいです。
M13「Da soli noi (We're all alone)」は、有名なBoz Scaggs(ボズ・スキャッグス)の曲のイタリア語カヴァー。しっとりした哀愁があり、甘くなりすぎることもなく、素直にメロディのよさを聴かせてくれます。