PAOLO VALLESI


SABATO 17:45 (1999年)

   パオロ・ヴァッレージ / サバト・ディチァセッテ・クアランタチンクエ
    (CGD EAST WEST 3984-26226-2 / ドイツ盤CD)



jacket photo   1: CANTO COSI
  2: L'AMORE E' UN FIORE
  3: LE PAROLE
  4: SENZA CAMBIARE IL MONDO
  5: CHE SENSO HA
  6: WISH YOU WHERE HERE
  7: BARCA SENZA VENTO
  8: C'E'
  9: SONO DOVE SEI
 10: 02:37
 11: NOIA
 12: IRREALE
 13: STRINGIMI
 14: 17:45

Prodotto e Arrangiato da PAOLO VALLESI







 オリジナルとしては5枚目になる、パオロ・ヴァッレージ(Paolo Vallesi)の最新盤。

 伝統的なカンツォーネ・イタリアーナの流れを汲む美しいメロディをベースに残しながらも、現代にもアピールする曲づくりとアレンジで、切なさを感じさせる歌声を聴かせるのが、これまでの彼の持ち味だったと思うのですが、このアルバムでは「現代的」であることを強く意識したのか、彼の売りであったはずの“切なさ”“やわらかさ”といったものが、かなり後退しています。なんか、普通の若手カンタウトーレになってしまったという感じを受けてしまいました。

 もちろん、ところどころにパオロらしさは残っていますし、1stからのアルバムにおける作風の流れを考えれば、本作のイメージは決して突然のものというわけではなく、多少スキップ幅は大きかったですが、一応、流れの延長上にはあるんでしょう。
 それでも、これまでのアルバムが持っていた、若いがゆえの不安定さ、不完全さ、それを補ってあまりあるみずみずしさ、まっすぐな感じが失われてしまっているようで、残念です。その代わり、都会に負けない強さ、安定感は増しているといえるでしょう。

 アルバムのイメージをもっとも変えてしまっているのは、人間味の感じられない打ち込みドラムと、肌触りの荒いギターの音色によるところが大きいと思います。これらが、今までの彼のアルバムにあった繊細な感じをすみに追いやり、アルバム自体の印象を変えてしまっています。
 ギターの使い方などは、イギリスのグループのような印象を受けます。

 そんななかにあっても、ヴォーカルはやはり彼らしいもので、その歌声は健在です。3曲目の「Le Parole」や6曲目の「Wish You Where Here」などは、今までの彼らしさが残っていて、やはりヴァッレージってうまいヴォーカリストだなと思います。
 ただトータルで見ると、せっかくの彼のヴォーカルが生かされた曲が少ないように思うんです。アルバム全体を通して、彼のヴォーカルの魅力を最大限引き出すような曲づくりがされていない、そう思えてしかたがありません。

 一聴したかぎりでの曲の幅は広がっているように感じますが、じつはこじんまりとまとまってしまったのかもしれません。
 このアルバムは彼のセルフ・プロデュースなので、これが彼が本当にやりたかった方向性なのかもしれませんが、この方向ですすむにしても、もう少し自分の唄の素晴らしさをアピールできる楽曲を期待したいです。
 アルバム全体の完成度としては決して低くなく、満足できるものではあるのですが、自分がパオロに求めていたものとは少し違う方法論で制作されたアルバムになっています。

 パオロは今、ひとつの分岐点にいるのかな。
 今回のアルバムがセールス的に成功するか失敗するか──それによって、次のアルバムの方向性が決まってきそうです。
 個人的には、もう少しシンプルなアレンジで、彼のヴォーカルの持つ本来の魅力を強調する方向へ行ってほしいな。

(1999.04.04)








Musica

Pensiero! -- la Stanza di MOA

(C)MOA

inserted by FC2 system