produzione artistica: Roberto Durkovic, Emilio Rossi
Giacomo Lampugnani: contrabbasso
Adrian Dumitru: chitarra
Massimiliano Alloisio: chitarra
Albert Florian Mihai: fisarmonica
Bosnea Ion: clarino
Loris Stefantu: batteria, percussioni
Pepe Ragonese: tromba
Roberto Durkovic: voce, chitarra
Walter Lupi: chitarra
Silvia Scrofani: voce
Elimio Rossi: pianoforte
Rhapsodija Trio: Maurizio Deho, Luigi Maione, Gianpietro Marazza
2005年の12月にリリースされたRoberto Durkovic(ロベルト・ドゥルコヴィッチ)のアルバム。モノクロの背景に自転車の赤だけが鮮明に色づけされている、ちょっと印象的なジャケットに引かれて入手してみました。
Durkovicという名前からしてルーツは東欧とわかりますが、お父さんはチェコのプラハ出身だそうです。Robertoは、学生時代はクラシックを学んでいたようです。また父親が東欧の人ということもあり、東欧の音楽にも強い興味を持っていたようで、そういった背景が彼の音楽にも影響しているといえそうです。
これまでRobertoのことをぜんぜん知らなかったのですが、アルバム・デビューは1989年と意外と古く、デビュー作『Come un treno locale』に収録された「Piccola Irene」がその年のSanremo Nuovi Talenti(新人発掘音楽祭みたいなものなのかしら?)で批評家賞を受賞するなど、それなりに注目されていたようです。その後もClub Tencoに参加するなど地道な活動を続けていたのですが、あまりにも地道すぎたのか、非常に地味な存在のままここまできてしまったのでしょう。そしてきっと、これからも地味なままなのでしょう。
この『Semplicemente vita』は彼の5枚目のアルバムです。リリース元がStorie di note/Suonimusicですから予想はしていましたが、おおよそ予想どおりの地味な作風です。ただ自分は、こういった地味な作風がけっこう好きなので、このアルバムも気持ちよく楽しめます。
ベースは、Robertoの少しいなたいヴォーカルをメインにしたフォーク・ソングだと思います。たとえばMassimo Bubola(マッシモ・ブボラ)などに通じるタイプでしょう。しかし、フォークをフォークのままのアレンジにしないのがRobertoのスタイルなのでしょうか、まんま「フォーク」な曲はほとんどありません。
バック・ミュージシャンにコントラバス、フィザルモニカ(アコーディオン)、クラリーノ(クラリネット)、トロンバ(トランペット)などを配し、さらにはギター、アコーディオン、ヴァイオリンによる街角楽師隊のようなRhapsodija Trio(ラプソディヤ・トリオ)というグループのバックアップも受け、古いヨーロッパの街角やキャバレーなどで聴かれそうな懐かしい感じを漂わせています。
ただ、これらのバック・ミュージシャンたちがすべての曲にかかわるわけではないようで、それもあってか、曲のイメージにアルバムとしての統一感がありません。おおまかには2つのタイプの曲があり、ひとつはクラリネットやアコーディオン、ヴァイオリンなどの演奏を前面に出した、古いユーロ・ジャズやキャバレー音楽、あるいはタンゴなどを思わせる、どことなくノスタルジックなもの、もうひとつはギターの音色を活かし、地中海風の乾いた明るさとあたたかさを感じさせるフォーク・タッチのものです。このふたつの曲想のあいだにずいぶん開きがあり、それらがランダムに配置されている(ような印象を受ける)ため、同じシンガーの同じアルバムを聴いているのかわからなくなってきます。
落ち着いたおっさん声のヴォーカルには味わいがあり、それぞれの曲も、タイプはいろいろですが、どことなく夢見心地な気持ちよさがあり、なんとなくホッとします。地中海フォークっぽいM2「Scintille」やM4「Alessandra」などは自分の嗜好的に、とても好ましく感じられます。