Pooh(プー)のメイン・コンポーザーでありメイン・ヴォーカリストでもあるRoby Facchinetti(ロビー・ファッキネッティ)のソロアルバムなので、基本的には「ひとりPooh」といった感じがあります。
ロマンティックで、メロディアスで、イタリアらしい柔らかさと美しさに満ちた楽曲で占められています。オーケストラも導入され、厚みとドラマ性も充分です。充実した楽曲が並びます。
随所でPoohぽいメロディが聴こえますが、そのまま「Poohの曲」にならないのは、コーラスがないのと、演奏の肌触りがずいぶんと違うからでしょう。ギターの音色やフレージングをはじめ、全体にPoohの演奏よりもソリッドな印象を受けます。Robyの弾くキーボードの音色も、Poohのときよりも硬めでストレートな感じです。そのため、もととなるメロディやヴォーカルは限りなくPoohに近いのに、Poohと同じ音楽にはなりません。
ソロ1作目である1984年の『Roby Facchinetti』ではPoohのDodi Battaglia(ドディ・バッタリァ)とRed Canzian(レッド・カンツィアン)がゲストで参加し、とくにRedのフレットレスベースのソロが入るあたりでは完全に「Poohの音楽」になってしまう場面もありましたが、2作目となる今作ではPoohからのゲスト参加はなく、だからか「もろPooh」になるところもありませんでした。
ソフトな印象の曲が多く、またイージーであまりいただけないインストなどもあった前作に対し、今作ではロック風なもの、やわらかいポップス、ロマンティックなバラードなど、曲調に多様性があり、アルバムとしてのクオリティもあがっていると思います。
ただ、それらの曲のどれもが、曲調の違いほどにはバラエティ感を表現できていないのが残念です。そのため、意外と単調に聴こえてしまいます。
もしここに他のPoohのメンバーがいて、それぞれの個性を、あるときはぶつけ、あるときは調和させて、全体のアンサンブルをつくっていたなら、もっともっと完成度と密度の高い作品になっただろうに ―― とも思うのですが、そうすると、それはすでにRobyのソロ作ではなく、Poohのアルバムになってしまいます。逆説的に、グループとしてのPoohの素晴らしさを意識させるともいえそうです。
このアルバムもよい作品ではあるけれど、優れたカンタウトーレたちの作品ほどにはレベルが高くはありません。やはり、メンバー4人の個性と才能が影響しあったPoohというグループのなかでのほうが、Robyの才能も高く評価されるのではないかと感じます。