RAF


PASSEGGERI DISTRATTI (2006年)

   ラフ / パッセッジェリ・ディストラッティ
    (SONY BMG MUSIC ENTERTAINMENT: 82876834092 / EU盤CD)



jacket photo
  1. SALTA PIU' ALTO
  2. DIMENTICA
  3. PASSEGGERI DISTRATTI
  4. IL NODO
  5. ONDE
  6. NATI IERI
  7. ACQUA
  8. SE PASSERAI DI QUI
  9. MONDI PARALLELI


produzione: Raf e Simone Papi

chitarre: Raffaele Riefoli, Silvio Mesanotti, Giorgio Baldi, Cesare Chiodo
piano: Raffaele Riefoli, Simone Papi
synthesizer: Raffaele Riefoli, Giorgio Baldi, Simone Papi
organo hammond: Simone Papi
archi mellotron: Simone Papi
basso: Cesare Chiodo, Max Gazze'
batteria: Piero Monterisi
percussioni: Piero Monterisi, Alessandra Gambini
tromba: Marco Tamburini
trombone: Roberto Rossii
sax: Fabio Petretti








Raf(ラフ)は、1980年代中ごろにデビューし、いまも現役のベテラン・シンガー。アルバムもコンスタントにリリースしているのでそれなりのディスコグラフィがあるのですが、自分は数枚しか聴いたことがありません。Ron(ロン)などと同様で、有名だし、悪くないんだけど、あんまり強い興味をもてないカンタウトーレのひとりです。アルファベート3文字の名前がいけないのか(違う違う)。

自分のなかでのRafの印象は、もっとロック色の強い感じだったのですが、このアルバムは落ち着いた感じの曲が多く、Rafのことをよく知る人がいうには、印象としては初期の頃に近い感じなのだとか。

M1「Salta piu' alto」のキーボードの音は、なんか懐かしい感じがします。1990年代の終わりから2000年代はじめくらいのアメリカとかのロック・グループって、こんなような音をだすキーボーディストが多かったような気が(むかしのことなので記憶が曖昧だけど)。途中でラップも入る軽快なポップス。

M2「Dimentica」ではゆったりとしたエイト・ビートがきざまれ、古いブリティッシュ・ポップ・ロックを思わせる、ほどよくノスタルジックなメロディが奏でられます。ここ数年のイタリアの若いポップ・ロック系グループなどによく聴かれるタイプのバラードですね。

M3「Passeggeri distratti」で聴かれる、エレクトリック・アコースティック・ギターのコード・ストロークはいい音だな。ミディアム・スローのポップ・ロックで、ときどき耳に届くエレクトリック・ピアノの音色や転調のしかたが都会風のしゃれた感じを出しています。歌メロ自体はキャッチが弱いかも。

M4「Il nodo」はヴォーカル・パート前半の、いくぶん字余り気味に言葉が発せられる感じがカンタウトーレ風で、自分好みです。サビではなめらかなメロディにオーケストラも入り、ほどよく切なく、やわらかに美しく盛り上がります。途中でラップもはさまれますが、ラップにもなぜかほんのり哀愁が漂うのがイタリアらしいですね。曲そのものとしては、どちらかというと素直でありがちなものだけれど、やわらかなノスタルジーとセンチメンタルが心地よく響きます。

M5「Onde」では、ピッチカート風のギターと単純なドラムのリズムに乗った歌が、のんびりとした楽しさ、やさしさ、あたたかさを感じさせます。後半部ではリズム隊が引いて落ち着いた雰囲気に変わった中にピアノが美しく響き、曲の印象に変化を与えます。

M6「Nati ieri」のヴォーカル・パート前半はラップらしい?ラップ。イタリアのラップは、メロディなしでリズミカルにつむぎ出される言葉(ヴォーカル)のうしろでは美しいメロディが奏でられているといったケースが多いように思うのですが、この曲のラップ・パートはどこにもメロディを感じないという点で、アメリカなどのラップに近いように思います。しかしヴォーカル・パート後半に入ると言葉にメロディがつき、イタリアン・ポップスらしい、なめらかで美しいものになっていきます。

M7「Acqua」は、フォーク・タッチになったPaolo Vallesi(パオロ・ヴァッレージ)風といった感じでしょうか。最後はオーケストラも入り、美しく、ノスタルジックに、ロマンティックになります。ただ、歌メロ自体は比較的平板で、盛り上がりには欠けるかも。

M8「Se passerai di qui」ではミュートをつけたトランペットやクリーン・トーンで奏でられるエレキ・ギター(セミアコかも)などが入り、ジャジーな雰囲気を漂わせています。比較的メロディの淡々としたスローな曲ですが、サビでちょっと情熱的になる盛り上がり方は、イタリアぽいといえばイタリアぽくもあり、その表現手段としてファルセットを入れたりするあたりはジャズ/ソウルぽくもあり。

M9「Mondi paralleli」はリズムの強調されたスローな曲。ほんのりした哀愁とドラマチックさをまとっていますが、その感じは最近の洗練されたものというよりは、古い歌謡曲的なある種のノスタルジーを思い起こさせます。ここでのRafのヴォーカルは少し醒めた感じがして、誰かの歌い方に似ているような気がするのだけど、それが誰だったか思い出せません...

全体に落ち着いた雰囲気とおだやかな印象があり、ほどよいノスタルジーをちりばめつつロマンティックとセンチメンタルを身にまとったといった感じです。クセが強いとはいえないけれど、あっさりしているともいえない程度にほどよく個性のあるヴォーカルや、派手ではないけれど、地味というには厚みもあるし手もかかっている演奏・アレンジなど、いろいろな意味で「ほどよい加減」に仕上がっていて、聴きやすく楽しみやすい作品になっているといえるでしょう。自分の好みをいうならば、これでもっと歌メロの構成に抑揚があればなぁとは思いますけれど。

(2008.2.17)







Musica

Pensiero! -- la Stanza di MOA

(C)MOA

inserted by FC2 system