1: E NOI PICCOLI PICCOLI
2: CIELO DI DIAMANTI
3: PER SPIEGARTI IL MIO CUORE
4: UN RAGGIO DI SOLE
5: CHE BELLO
6: QUESTI TRISTI LUNEDI'
7: TU COME LA LUNA
8: NEMICO DI ME STESSO
9: GLI SPOSETTI DI CAMPAGNA
1970年代中頃から活動しているカンタウトーレ。
すっかり頭が禿げ上がり、ほとんど白髪の口髭を生やした、目もとの優しそうなおじいさんがジャケットに写っているが、この人がレンツォさんなんだろうな。『イタリアン・ロック集成』によれば、75年の時点ですでに髪が……となってるが、20年後の姿がこれなんでしょう。
しかし、いったいいくつなんだろう? 75年でたぶん20代とのことなので、このジャケットはまだ40代? それにしちゃ老けてる。
『イタリアン・ロック集成』には70年代のアルバム4枚が紹介されていて、どれもオーケストラをバックに、地味だが美しくも優しい曲調のようだけど、このアルバムにはオーケストラはいない。5曲目以降にはヴァイオリンの入る曲もあるが、どちらかというとフィドルといった感じのもの。
ただ、地味で優しい曲調というのは変わっていないようだ。
最初の2曲は、どこかのリゾートで寝っ転がっているような、非常に軽やかで気のぬけた感じのもの。本で得た予備知識とはまったく異なる印象で、ちょっと「失敗したかな」と思わせる。
しかしアルバムの中盤あたりでは、ポップながらも落ち着いた曲とレンツォさんの優しげな声とがうまくマッチし、それなりに味わい深い。
全体的には、余分な力の入っていない、非常にリラックスした感じのポップス・アルバム。ポップスといっても、最近のもののように洗練されたものではない。どこか垢抜けない、不器用さを感じる。
また、力強さとか押しといった言葉とは無縁。曲やアレンジだけでなく、歌声自体にも、強さはない。
地味な曲が多いが、同時に暖かみもある。垢抜けないメロディと、彼の声のせいだろうな。
これといった個性とか特徴といったものがないのが残念。
とくにメロディが印象的とかアレンジが感動的といった曲がなく、なんとなくアルバムが終わってしまう。何回も聴けば味わいが増すのかなとも思うのだけど、そこまでの気にさせるだけのものがなかなか見つからない。
ただ、こういう声は、曲とアレンジさえはまれば、非常に心に染みるものになりそうに思う。その点で、70年代のアルバムというのをぜひ聴いてみたいものなんだけど、90年代のアルバムがこれでは、再発はむずかしいんだろうな。
寝っ転がってマンガとかを読むときのBGMにはいいかもしれないけれど、真剣に聴き込むほどのものでもない。
中古で見つけて、「おっ、Renzo Zenobi じゃん。イタ集に名前が載ってたな」と思って買っても、多分、楽しめない。
売れないよね、これじゃ。