1975年から82年にかけての曲を収録したベスト盤。この時期がおそらく、Renzo Zenobi(レンツォ・ゼノービ)がもっともコンスタントに活動していた時期なのでしょう。
その黄金期(?)にもそれほど人気がなかったのか、それとも1990年代以降の活動がほとんど伝わってこないからか、音盤メディアがLPからCDに移り変わるのにうまく対応できなかったようで、RenzoのCDをショップで見かけることはほとんどありません。といってLPを見かけたことも自分はなく、Renzoのオリジナル・アルバムとしては1995年の『Proiettili d'Argento (per un cuore di lupo)』しか聴いたことがありません。このアルバムもかなり地味な作風で、きっと売れないんだろうなと思いましたが、やはり売れなかったようで、すぐにこのCDもショップで見かけなくなってしまいました。
そんなRenzoなので、このベスト盤はある意味、とても貴重なのかもしれません。収録されているのも新録ではなく当時の録音のようですし。
Umberto Balsamo(ウンベルト・バルサモ)をさらにさらに地味にしたような作風ですが、やさしい歌声やおだやかなオーケストレーションはイタリアの美しさに満ちています。華やかさや輝きというようなものがほとんどなく、そのためにインパクトが弱いのですが、そういった「控えめな感じ」もRenzoの魅力でしょう。
ストリングスのオーケストラも、艶のあるなまめかしい音色というよりは、どこかザラザラとした、ホワイトノイズがまざっているような音色で、これがいっそう、落ち着きとおだやかさを感じさせます。曲によっては混声のコーラスなども入り、合唱ポップス/ロックの好きな自分にはツボです。ぜひベスト盤ではなくオリジナルなかたちでの再発を望みたいカンタウトーレです。
M5「Una pioggia d'affetto」とM8「E ancora le dirai ti voglio bene」はEnnio Morricone(エンニオ・モッリコーネ)がアレンジをしています。また、M7「Marinara」、M9「Telefono elettronico」、M12「Fumatori」、M15「A questo cielo capovolto che tutti chiamano mare」、M17「Corriera di natale」はLucio Dalla(ルーチォ・ダッラ)がアレンジとプロデュースを担当し、M7ではRenzoとのデュエットも聴かせてくれます。