arrangiamenti: Albert Verrecchia, Renato Zero
direzione d'orchestra: Nicola Samale
本名Renato Fiacchini(レナート・フィアッキーニ)。のちにイタリアのスーパースターとなる彼は、1950年9月30日にローマで生まれました。1966年にシングル「Non basta mai」で歌手としてデビューしますが、その後はFederico Fellini(フェデリコ・フェッリーニ)の映画『Satyricon (サテリコン)』に出演したり、ミュージカル「Hair (ヘアー)」のイタリア語版やTito Schipa Jr.(ティト・スキーパ・ジュニア)のポップ・オペラ『Orfeo 9 (オルフェオ・ノヴェ)』に出演するなど、出演者としての活動が多かったようです。
RCAレーベルとの契約を得、カンタウトーレとしての本格的な活動のスタートとなったのが1973年のこのアルバム『No! mamma, no!』。アルバムの冒頭にはMCによるRenatoの紹介があり、観客の拍手と歓声、そして歌が始まります。なんだかやたら盛り上がっています。
むかしはデビュー・アルバムがライヴ盤ということはそんなにめずらしくなかった(よね?)ので、Renatoもそうかなと一瞬思うのですが、どうやらこれ、擬似ライヴのようです。曲のほとんどが最後で微妙にフェイド・アウトですし、曲の途中や合間で入る歓声がいかにもとってつけた感じ。微妙です。
最近の彼はすっかりドラマティック&メロディアス・イタリアン・ポップスの大家といった印象ですが、このアルバムで聴かれる曲は意外と素朴なフォーク・ロック風味のものが多いです。また、ギターのカッティングにワウワウをかませるなど、いかにも1970年代な印象のロックも多く、メロディの美しさはところどころに散見できるけれど、まだこれといって強い個性や異彩を放っているといった印象はありません。全体には、デビューしたてのころのDavid Bowie(デヴィッド・ボウイ)とかにちょっと通じるところがあるかなと感じました。
M1「Paleobarattolo」、M3「Sergente, no!」、M5「0/1023」などは素朴なフォーク・ロック、M4「Tk6 chiama torre controllo」やM8「Ti bevo liscia」などは70年代風のロック、M7「Dana」はRenato流のロックンロールです。
M10「Sogni nel buio」は右スピーカーからピアノのアルペジオ、左スピーカーからはRenatoによる歌詞の朗読?という、いかにもあの時代のちょっとアート等を意識したアルバムにありそうなもの。
アルバム最後を締めるタイトル曲のM11「No! mamma, no!」はポップ・オペラの1曲のような曲調で、なんとなくその後のRenatoを思わせます。かなりポップですけれど、バックで控えめに鳴っているハモンドオルガンの響きが美しいです。