1: L'IMBARCO
2: IL PELO SUL CUORE
3: L'ISTRIONE
4: LA CANZONE DI MARINELLA
5: LA VOCE MIA
6: TU SI 'NA COSA GRANDE
7: LE MIE DONNE
8: VEDRAI VEDRAI / LONTANO LONTANO
9: QUELLO CHE NON HO DETTO
10: IL MIO MONDO / IL NOSTRO CONCERTO
11: ANCHE PER TE
12: LA ZERONAVE
13: TUTTI GLI ZERI DEL MONDO
14: VIA DEI MARTIRI
prodotto di: Marco Forni e Phil Palmer / Renato Serio
batteria: Lele Merolotti
basso: Maurizio Galli, Paolo Costa
pianoforte: Stefano Senesi
chitarre: Phil Palmer
tastiere: Marco Forni
orchestra fonopoli
arrangiamenti e direzione: Renato Serio
1998年の名作『Amore dopo amore』以後、ライヴ盤、ベスト盤のリリースが続いていたRenato Zero(レナート・ゼロ)。前作をしのぐオリジナル・スタジオ録音が待たれる彼が2000年にリリースした本作は、またしても完全なオリジナル・アルバムではなく、収録曲の約半分が偉大なシンガー・ソングライターたちの曲のカバー、残りが彼のオリジナルというつくりになりました。
カバーされているのはCharles Aznavour(シャルル・アズナヴール)、Fabrizio De Andre'(ファブリツィオ・デ・アンドレ)、Domenico Modugno(ドメニコ・モデューニョ)、Luigi Tenco(ルイジ・テンコ)、Umberto Bindi(ウンベルト・ビンディ)、Lucio Battisti(ルーチォ・バッティスティ)の曲で、オリジナルを聴いたことのあるものもあれば、そうでないものもあるのですが、おそらくどれも1970年代はじめころに発表された曲ではないかと思います。
なので、Renatoの新曲群とは作曲時期に20年以上の開きがあるのだろうと思いますが、カバー曲も彼のオリジナルも、この『Tutti gli zeri del mondo』という1枚のアルバムのなかで、違和感なく並んでいます。
それは、アルバム全編を通して聴かれるオーケストレーションが全体的な統一感を持ってアレンジ・演奏されているからでしょうが、それ以上に、Renatoのヴォーカリストとしての個性の強さ、そして、カバー曲も新曲もともに雰囲気のある美しいメロディを持っているという共通点が、あるからでしょう。
オーケストラによるインストゥルメンタル曲による幕開けから、このアルバムでこれから展開されるであろうドラマを感じさせ、期待が高まります。そして、オリジナル曲とカバーを上手に配置した構成は、その期待を裏切りません。
カバー曲はいくぶんノスタルジックに、オリジナルはやわらかく優しい感傷を響かせます。こうして並べて聴くと、Renatoのメロディは、むかしもいまも、やはりポップなのだなと実感します。
宇宙を旅する木製の帆船を描いたジャケットは、ちょっと子供だましっぽいというか、いまどきこれはないだろうという感じもしますが、こういった少し前時代的ともいえるドラマ性やロマンティシズムが、ある意味で彼の大きな魅力だといえるでしょう。
そういった魅力が、彼の生み出すメロディにいまも息づいているからこそ、Luigi TencoやUmberto Bindiといった古いカンタウトーレたちの曲と並べても、それほど違和感がないのではないでしょうか。
リズム主体の音楽を愛好する若い音楽ファンには、そのあたりが馴染みにくいところかもしれません。しかし、イタリアはメロディの国といわれます。ひとつひとつのフレーズがそれぞれに美しいメロディを持っているのが、イタリアン・ミュージックの魅力のひとつでもあります。母音をはっきりと発音するイタリア語は、その言葉自体が美しいメロディを持った音楽だともいえます。
そういったイタリアン・ミュージックならではの美しさが、Renato Zeroのこのアルバムにはあるのです。
全曲がオリジナルではなく、半分近くがカバー曲であるため、さすがに前作『Amore dopo amore』ほどきちんと計算され構成されたアルバムとはいえませんが、全体にクラシック的なゆったりとした空気が漂う、聴いていておだやかな気持ちになれる作品です。