1: LA FAVOLA MIA
2: IO UGUALE IO
3: CHI SEI
4: TRIANGOLO
5: SOGNI DI LATTA
6: SESSO O ESSE
7: FERMATI
8: AMARO MADELY
9: SBATTIAMOCI
10: UNA GUERRA SENZA EROI
11: UOMO, NO
produzione: Piero Pintucci
arrangiamenti: Ruggero Cini
realizzazione: Rodolofo Bianchi / archi diretti da Piero Pintucci
Renato Zero(レナート・ゼロ)がポップスターとて本格的に人気が出始めたのは、1980年代に入ってからだといいます。このアルバムは1978年のリリースですから、スター前夜といえるでしょう。
1970年代の彼の作品は、これまで自分は1974年の『Invenzioni』しか聴いたことがなく、正直にいって、それほど興味の持てるものではありませんでした。
その後、彼の作品は80年代以降の、それも2枚組の出来がよいというので、2枚組アルバムを中心に集めだしたのですが、現時点で自分が聴いたことのある作品のなかでは、1998年の『Amore dopo amore』が傑出して出来がよいように思います。『Amore dopo amore』にくらべると、80年代の2枚組はあまりにも歌謡曲的で、音楽としての存在感が薄っぺらく感じるのです。
最初期の作品にあたる『Invenzioni』はアングラ・ロック的な印象が強く、80年代は歌謡曲的で薄っぺら。この2つの時代を通り抜け、またRenato自身もアーティストとして年輪を重ねたことで、90年代後半以降の充実が可能になったのかなと思っていました。
でも、1978年のこの『Zerolandia』を聴くと、近作は、じつはこのアルバムの時代への回帰なのかもしれないと感じます。
声はまだ若く、いまのようなまろやかさや奥行きはありませんが、独特の濁りがある低い声は個性的で心地よく響きます。ヴォーカルのうしろでやわらかく明るい光を感じさせる音色を奏でる弦楽器はマンドリンでしょうか。各種楽器のアンサンブルと美しいオーケストレーションは、曲に優しい広がりと深みを与えています。
80年代の作品に聴かれる歌謡曲的な部分もすでに出てきていますが、薄っぺらにならず、曲としての質感を充分に保っています。初期の重く暗いアングラ風ロックから80年代の歌謡曲的ポップスに移行する途中にあるからか、それぞれのよい面が混じりあい、ほどよい重量感と情感を持ちつつも、あたりの柔らかいポピュラリティを持った作品になっています。
メロディの美しさはまさにイタリア的です。オーケストレーションに彩られたバラードに聴かれる彼のヴォーカルは、若いゆえの粗さと浅さはありますが、それが若さの魅力として感じられます。のちの『Amore dopo amore』で円熟した、懐の広い、奥行きのある歌を聴かせてくれるRenatoの、若かりしころの姿、才能が、ひしひしと感じられるのです。
起伏のあるアルバムや曲の構成はドラマを感じさせ、演者であるRenatoは見事にそのドラマを演じきっています。ポップス/ロックというよりはロック・オペラ的な作風は、すでにこのころからできあがっていたことがわかります。