RENATO ZERO


ERO ZERO (1979年)

   レナート・ゼロ / エロ・ゼロ
    (BMG RICORDI 74321 769142 / イタリア盤CD)



jacket photo   1: IL CARROZZONE
  2: FERMO POSTA
  3: LA TUA IDEA
  4: BARATTO
  5: LA RETE D'ORO
  6: PERIFERIA
  7: GRATTACIELI DI SALE
  8: RH NEGATIVO
  9: NASCONDIMI
 10: ARRENDERMI MAI


produzione, realizzazione, arrangiamenti e direzione d'orchestra:
Piero Pintucci







 ドラマティックな展開を持った、Renato Zero(レナート・ゼロ)らしい作品です。独特のポップ・オペラ的作風が楽しめます。歌メロも美しく、落ち着きのあるヴォーカルも充分に聴けます。

 オープニング曲はRenatoにしては珍しく(?)、南欧のキラキラした太陽と海の反射、そして哀愁を感じさせます。いわば、Renato流ナポレターナといったところでしょうか。どちらかというと、つややかなポップス風味やクラシカルなアレンジの多いRenatoにしては、あまりないタイプの曲だと思います。
 いわゆるナポレターナの歌手のような豊かな声量や輪郭のはっきりとしたヴォーカル・スタイルとは違うため、澄み切った感じにはなりませんが、どことなくフランス風な印象もあるナポレターナとして、一風変わった郷愁を持っています。

 他の曲は、よりポップで歌謡曲的な印象もありますが、シャンソン的な哀愁を持った曲も多くあります。また、ときにユーモラス、ときにドラマティックに響く楽曲群は、やはりポップ・オペラ的、あるいはミュージカル的です。
 バックのアレンジには1980年代の歌謡曲的な薄っぺらさが強く出始めていますが、この時点ではまだ、曲の肌触りにざらざらとした重さが残っているものが多いので、アルバム全体としてはそれほど軽い感じになっていません。

 演劇的というよりは芝居がかったというほうが的確であろうRenatoのヴォーカルは、このアルバムでも充分に楽しめます。
 このヴォーカル・スタイルは彼の個性のひとつであり、魅力の一部でもありますが、バックの演奏も含めて、このアルバムでは多少、芝居っ気が強すぎかもしれません。最近の若い音楽ファンなどからは失笑が漏れそうな気もします。

 とはいえ、彼の生み出すメロディのしなやかさ、美しさは、非常にイタリア的、ヨーロッパ的なロマンにあふれていて、その輝きはエヴァーグリーンといえるでしょう。実際、イタリア本国でも大ヒットとなった1998年の名盤『Amore dopo amore』に聴かれるメロディと、この『Ero Zero』に聴かれるメロディとの間には、質感の点でそれほど違いがありません。

 けっきょくRenatoの生み出すメロディは、常に一定のクオリティ、質感を持っていて、そのアレンジが時代時代で変わっているだけなのでしょう。その点で、よいアレンジャーがRenatoには必要なのだと思いますが、残念ながら80年代前半は、あまりアレンジャーに恵まれなかったのかなという印象が、自分にはあります。
 しかし、実際は80年代に入ってから彼の人気は上がったのだそうですから、時代の流れのなかでは、それはそれでよかったのでしょう。

 このアルバムに関していえば、80年代の歌謡曲風味が強く感じられるものよりかは普遍的なよさを持っているとはいえそうですが、前作の『Zerolandia』にくらべると、クオリティが少し下がっていると感じます。

(2001.03.18)








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