produced by: YNGWIE J. MALMSTEEN
Yngwie J. Malmsteen: guitars, bass, sitar, vocals
Michael Vescera: vocals
Matts "Thailand" Olausson: keyboards, small hammond organ
Mike "The Spike" Terrana: drums, triangle
初期のころのYngwie Malmsteen(イングヴェイ・マルムスティーン)のアルバムにはクリスタルのような透明さが満ちていて、英米のロックとは違うスウェーデンならではの陰影とクラシカルな響きに魅了されたものです。ギターソロのスピードやディミニッシュ・スケールを多用したフレージングは素晴らしく、それがバッキングの凡庸さや意外と艶のないヴォーカル・ラインといった部分を充分以上にカバーしていました。
そのころの作品とくらべると、このアルバムでは透明さが後退した反面、より力強さが出てきていて、ヘヴィ・メタルらしいサウンドになっています。バッキングのアレンジもいくらかあか抜けてきたし、曲調も北欧らしいクラシカルなものやアメリカンなもの、ドラマティックなスピード・メタルなど、幅が広がっています。ヴォーカル・ラインも、艶のなさはあいかわらずですが、それでもかなりこなれた感じです。
ちょっと気になるのは、Yngwieのギターの音色です。なんかザラザラしているというか、以前にくらべて美しくないんです。以前はもっとクリアななかに暖かみのあるディストーション・サウンドだったと思うのですが、ここで聴かれるギターはザクザクしたキメの粗いディストーション・サウンドです。デヴュー当時の繊細な音色が気に入っていたので、ちょっと残念です。
M1「Never Die」は典型的なYngwieサウンドです。Yngwieらしいコード進行、陰影はあるけどどこか深みに欠けるようなヴォーカル・ラインとドラマティックなギターソロが楽しめます。
M2「I Don't Know」はアメリカンな曲。こういう曲も書けるようになったんだな。初期のころのアルバムにはみられないタイプの曲で、曲づくりの幅が広がったことを感じます。演奏アレンジも少し凝ったものになっています。ベース・ラインの動きなど、アメリカン・ロックのよいところを吸収しています。ただ、Yngwieにこういう曲が求められているかは、また別の話でしょう。
M4「Forever One」はアコースティック・ギターのフレーズから入るYngwieらしい壮大なロック・バラード。大仰なヴォーカル・ライン、クラシカルなギターソロ、スウェーデンらしい陰影が楽しめます。
M6「Brothers」もYngwieらしいインストゥルメンタル。Alcatrazz(アルカトラス)の「Suffer Me」に似たイメージを持ったメロディが印象的です。
M7「Seventh Sign」でもYngwieのスピーディでクラシカル・メロディアスなギターソロが堪能できます。ただ印象としては、スウェーデンというよりはジャーマン・スピード・メタルに近いような気もします。
M9「Prisoner of Your Love」はハリウッド産愛と感動のパニック大作映画(人類の危機をアメリカ人が命をかけて救う、そのために愛する者と2度と会えなくなったとしても……、てな感じのやつ)のテーマ曲になりそうな、大仰かつドラマティックかつ感動的(?)なミディアム・ロックです。
M13「Angel in Heat」はなんだかドタバタと騒がしい曲。ヴォーカル・ラインも演奏もやかましいだけで、ドライヴ感とかあまりないし、曲のクオリティとしてはどうなんだろう。あまりYngwieである必要を感じません。