all songs and lyrics written by Jean-Pierre Schenk
Jean-Piere Schenk: vocals, keyboards, drums
Giova Esposito: guitars
Dominque Schelafer: bass
David Grillon: guitars
Milena Zaharieva: flute
Metamorphosis(メタモルフォシス)はスイスのグループだそうです。かなりオーソドックスなシンフォニック・プログレッシヴ・ロックを演奏します。最近のものはヘヴィメタル風だったりジャズ風だったりといった、テクニカルでハードなタイプのプログレッシヴ・ロックばかりかと思っていたのですが、こういうタイプのプログレッシヴ・ロックもまだあるんですね。
ヴォーカルは、歌メロも、歌唱力という点でも、ちょっと弱い感じです。ファンタジックなタイプのヴォーカルで、イギリスぽいかもしれません。
M1「After all these years」のギターは、思いっきり1970年代から80年代のPink Floyd(ピンク・フロイド)風です。このギター・ソロとヴォーカル・パートのマッチングがちょっと微妙な感じですが、それでも王道のシンフォニック・ロックといった感じで好ましいです。
M2「New lords」では、いくぶんハードな要素が増してきます。エレキ・ギターによる少し重めのコード・ストロークが入り、スペイシーなシンセサイザーも入り、ありがちではあるけれど、やはり好ましいシンフォニック・プログレッシヴになっています。なめらかで、ブルージーで、ときに鋭いギター・ソロは、やっぱりPink Floyd風というか、David Gilmour(デヴィッド・ギルモア)風。そのあとのキーボード・ソロは、ちょっとありきたりかな。
M3「Sanctuary」が始まったときは「Welcome to the Machine」かと思いました(笑)。
M4「Didn't we know」は、曲の前半ではアメリカンなポップ・ロックになりそうに見せかけつつ、サビに入るとRoger Waters(ロジャー・ウォーターズ)脱退後のPink Floyd風になるのがおもしろいです。さらに終盤にかけては典型的なシンフォニック・ロックに展開していくのもグッドです。
M5「Eyes on the clock」は凡庸なメロディと構成で、たいしたことのない曲なのだけど、終盤にかけてはDavid Gilmour風ギターにちょっぴりKing Crimson(キング・クリムゾン)風味もまじって、なんとなく笑顔になってしまいます。
M7「Another day」はめずらしくPink Floydの影がほとんど見えないシンフォニック・ポップス。さわやかで美しいコーラスが聴けます。古いブリティッシュ・ポップス風の味わいもあり、初期のForeigner(フォリナー)などを思い出しました。
M8「Not far from Heaven」もPink Floydの影は見えません。スペイシーなシンフォニック・ロックで、ヒューマン・ヴォイスによるコーラスも入り、王道シンフォニックといった感じです。
全体にメロディとヴォーカルが弱いのと、あまりにもPink Floydの影やその他の往年のグループの影響が見え隠れしてオリジナリティが弱く感じられるところはありますが、これはこれでけっこう楽しめる作品だと思います。ヴォーカルにもっと力量があれば、さらに聴かせられる作品になったことでしょう。