ヨーロッパで大ヒットとなったTiziano Ferro(ティツィアーノ・フェッロ)のデビュー・アルバムです。うちにあるのはコピーなもので、プロデューサーとかミュージシャンとかわからないのですが、ともかくこの1枚で一気にトップ・アーティストの仲間入りをしました。
実際、とても才能のあるシンガーだと思います。ヴォーカルそのものに個性があるというのは、シンガーとして大きな強みです。声質にも個性がありますし、歌自体も上手です。
基本はR&Bをベースにしたポップ・ミュージックで、ラップの要素も強く、その意味ではそれほどイタリアを感じさせないという、最近の若いアーティストにありがちなタイプにも感じられるのですが、その一方でイタリアらしいメロディや情感にあふれたバラードもきちんと歌える、ほどよくロマンティックかつエロティックに歌える。大きなメロディも歌えるだけのしっかりした歌唱力を持ったうえでラップを歌っているというのがわかります。
曲のタイプ的には、自分の好みのものではありません。ラップとかR&Bベースのポップスとかにはあまり興味を持てないので。そしてTizianoの曲はそういったタイプのものが多く、アルバム収録曲の大半がそういったものです。でも、そういった曲の合間に収録されている、ラップではないポップス、たとえばM4「Imbranato」などが自分を魅きつけるに充分な魅力を持っていたりするので、なんとなく最後まで聴いちゃおうかなという気になる、聴かせてしまう、というところがヴォーカリストとしてすごいなと感じます。
セカンド・アルバムの『111』ではラップ/R&B要素がより強まり、自分にとってはちょっと聴くのがきつくなってきているのですが、このデビュー・アルバムではまだそれ以外のポップス要素もほどよくあり、自分でもそれなりに楽しんで聴けます。自分の好みからすると、このポップス要素をもう少し強めて、ラップ/R&B要素とのバランスを取ってもらえたらよかったのになと思ってしまうのですが、最近のイタリアにおけるポップ・ミュージックの流行の流れがどちらかというとR&Bベースのものにあるように感じられるので、しかたがないとはいえますね。