UMBERTO BALSAMO


NATALI (1975年)

   ウンベルト・バルサモ / ナタリー
    (POLYDOR DCI-23239 / EDISON ERC-28021 / 日本盤CD)



balsamo1   1: NATALI
     ナタリー
  2: UN UOMO E UN SUO PROBLEMA
     ある男のひとりごと
  3: PAPPAGALLI SENZA SESSO
     女ったらし
  4: DISORDINE INFANTILE
     君のわがまま
  5: NON DIRMI NO
     僕の愛
  6: SOLO IO
     孤独
  7: VOLENTE O NOLENTE
     美しい印象
  8: IN UN NEGOZIO DI GIOCATTOLI
     おもちゃ屋
  9: O PRIMA, ADESSO O POI
     もう、待てない
 10: NATALI
     ナタリー







 ウンベルト・バルサモは日本でも CD が2枚、LP が1枚出ている(みんな廃盤だけど)わりには、なんか知名度がないというか、話題にのぼることが少ないカンタウトーレですが、非常に素直で美しいイタリアン・メロディを聴かせてくれます。地味ではあるけれど、もっと多くの人に聴かれてもいいんじゃないかな。

 1970年代は1〜2年に1枚ずつ、コンスタントにアルバムを出していたようですが、80年代以降は忘れたころにアルバムが出る程度で、いちばん最近出たのは92年頃のようです。そのアルバム、自分は残念ながら買い逃してしまい、いまだに聴けずにいます。

 この『Natali』は彼の2nd アルバムで、彼の代表曲である「Natali」で始まり「Natali」で終わる、代表作のひとつです。
 アルンニ・デル・ソーレ(Alunni Del Sole)のオーケストラ・アレンジやレ・オルメ(Le Orme)のプロデューサーとして知られているジャンピエロ・レヴェルベリ(Giampiero Reverberi)がオーケストラ・アレンジを担当しており、抑え目だけれども効果的に盛り上げています。

 ウンベルトは、イタリアによくあるダミ声タイプのカンタウトーレではありません。優しく、暖かく、どこか頼りなげなまるい声で包み込んでくれます。力いっぱい声を張り上げたり、絶叫したりすることはありません。

 彼のアルバムは、自分は4枚くらいしか聴いたことがないのだけど、そのなかでもこのアルバムは非常に素朴な感じがします。
 今風の音楽しか聴かない人からすると、あまりにも華がないというか、刺激的なことはまったくないけれど、イタリアンなメロディが好きな人にとっては、そんなことは問題ではないはず。落ち着いた、優しさの中に密かな哀しみを秘めた彼の唄は、昔からのイタリアン・ファンのためにあるんだといえます。

 オープニングとエンディングで唄われる「ナタリー」は、叙情的で切ない名曲です。オープニングはオーケストラをバックに深く盛り上がり、エンディングはキーボードとアコースティック・ギターを中心にシンプルに唄われますが、どちらもひなびた哀愁が心地よいです。
 この曲のイメージが強いため、哀愁・マイナー系の人かと思いがちですが、意外と明るい感じの曲も多いです。もちろん、若者のように能天気でむやみやたらと元気に明るいわけではなく、落ち着いた明るさですが。
 全体を通して、落ち着き、優しさ、素朴さが感じられる、心に優しいアルバムだと思います。

 ところで、さっき、このアルバムを聴いているときに外でセミが鳴いていたのですが、思ったより違和感がありませんでした。
 いままで思ったこともなかったのですが、もしかしたら、夏休みに自然がいっぱいあるどこかの田舎で聴いても、けっこうイケるかもしれません。

 彼のアルバムは現在、ほとんどが入手困難になっていて、非常に残念です。自分の持っている日本盤も当然、ずいぶん昔に廃盤になってしまいました。
 しかし最近(1998年)、韓国のプログレ再発レーベル「Si-Wan」から、このアルバムは再発されています。プレス数は少ないだろうし、プログレ系の専門店でないと扱いもないだろうから、簡単には入手できないかもしれませんが、もし機会があったらぜひ聴いてもらいたい、多くのイタリアン・ファンに楽しんでもらいたいアルバムです。
 オールド・スタイルの音楽だけど、こういう音楽って、大切にしたいです。

(1998.08.22)








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