produced by Procol Harum / Ron & Howie Albert
music by Gary Brooker
words by Keith Reid
Gary Brooker: voice and piano
Mick Grabham: electric guitars
Pete Solley: organ and synthesisers,
Chris Copping: bass
Barrie Wilson: drums
Procol Harum(プロコル・ハルム)の10枚目のアルバム。このアルバムのリリースと、アルバム・プロモーションのための小さなツアーを行なったのち、Procol Harumは活動を停止します(のちに再結成され1991年に『The Prodigal Stranger』をリリースしますが)。
おそらく船の甲板にある椅子に座る、首のない貴婦人。注に浮かぶ逆さまの金魚鉢(金魚入り)。空を埋め尽くす黒雲と水平線上に輝く光。意味ありげなモチーフがふんだんに配置されたジャケット・アートは、プログレッシヴ・ロック風です。収録されている曲にもオーケストラもふんだんに使っていて、このアルバムではたおやかなクラシカル・エレガンスを意識したのかもしれません。
M1「Something Magic」では、冒険映画に出てくる砂漠の王宮での王様のお出ましのときにかかるようなイントロがなんだか楽しいです。おなじみのオルガンやオーケストラのほかにブラスも入り、ほどよくクラシカル、ほどよくユーモラスで、Procol Harumの持つ音楽性をほどよい薄さで総動員といった印象です。
M2「Skating on Thin Ice」はピアノとオーケストラを中心とした、おだやかでのんびりしたスロー・ポップス。ほんのりクラシカルな風味は、やはりProcol Harumサウンド。
M3「Wizard Man」はミディアム・テンポのポップ・ロック。ハンド・クラップやオルガンの使い方が1960年代や70年代前半の香り。伸びやかでないエレキ・ギターの音色も、古き良き時代のロックを思い出させます。
M4「The Mark of the Claw」では、クラシカル・エレガンスとは別方向でのProcol Harumの特徴でもある、ちょっといなたいブルース・ロックを聴かせてくれます。ピアノのコード・ストロークやファズ・ギターの音色が懐かしい感じです。
M5「Strangers in Space」はスローなジャズ・ブルース風のバラード。ハモンド・オルガンが心地よい音色でなっています。効果音の使い方がちょっと彼ららしくないかな。
M6〜M8は「The Worm & The Tree」という組曲。ピアノとオーケストラ、そして忘れてはならないハモンド・オルガンを中心に、Procol Harumのクラシカル・エレガンスな側面をたっぷりと聴かせてくれます。中間部では軽やかなリズムに乗ったポップスや、いなたいブルース・ロック風なパートも挿入されますが、全体を通してはイギリスの田園を思わせるような、のんびりとおだやかで美しい風景が思い浮かぶような曲調です。詩の朗読のような、あるいはナレーションのようなヴォーカルも、どことなくファンタジックな雰囲気を加味しています。
それぞれの曲にProcol Harumのもつさまざまな面が感じられて愛らしいのではあるけれど、曲そのものの持つ魅力や、アルバム全体の持つ吸引力といった点では、ちょっと弱いし小粒だなという印象があります。このアルバムでいったんProcol Harumはその歴史の幕をおろすのですが、なんとなく「力尽きて倒れた」といった印象で、少し寂しさを感じます。