1. 4:30AM (APPARENTLY THEY WERE TRAVELLING ABROAD)
2. 4:33AM (RUNNING SHOES)
3. 4:37AM (ARABS WITH KNIVES AND WEST GERMAN SKIES)
4. 4:39AM (FOR THE FIRST TIME TODAY, PART 2)
5. 4:41AM (SEXUAL REVOLUTION)
6. 4:47AM (THE REMAINS OF OUR LOVE)
7. 4:50AM (GO FISHING)
8. 4:56AM (FOR THE FIRST TIME TODAY, PART 1)
9. 4:58AM (DUNROAMIN, DUNCARIN, DUNLIVIN)
10. 5:01AM (THE PROS AND CONS OF HITCH HAIKING PART 10)
11. 5:06AM (EVERY STRANGERS EYES)
12. 5:11AM (THE MOMENT OF CLARITY)
produced by ROGER WATERS and MICHAEL KAMEN
Andy Bown: hammond organ & 12 strings guitar
Ray Cooper: percussion
Eric Clapton: lead guitar
Michael Kamen: piano
Andy Newmark: drums
David Sanborn: saxophone
Roger Waters: rhythm, bass guitar & vocals
backing vocals are; Madeline Bell, Katie Kissoon, Doreen Chanter
horns are; Raphael Ravenscroft, Kevin Flanagan, Vic Sullivan
the National Philharmonic Orchestra conducted and arranged by Michael Kamen
Roger Waters(ロジャー・ウォータース)が友人とともに1960年代に結成し、1983年のアルバム『the Final Cut』を最後にグループを去るまで中心人物として活動をしてきたPink Floyd(ピンク・フロイド)は、自分が学生時代にもっとも愛聴していたグループです。
当時は、いわゆるプログレッシヴ・ロックのファンとしてイギリスやヨーロッパのさまざまなグループを聴いていましたが、Pink Floydはいつも別格でした。
ブリティッシュ・プログレッシヴの大物たち、King Crimson(キング・クリムゾン)やYes(イエス)、Genesis(ジェネシス)などももちろんいいグループですが、もっとも身近に感じ、音楽が映し出す世界のなかに安息の地を見出せたのはPink Floydだけでした。それはPink Floydが、他の大物グループとは違い、技術やファンタジー、あるいは難解な方向に向かわず、つねに人間的なストーリーを映像的な音楽で表現してきたからでしょう。
コアなプログレッシヴ・ロック・ファンのなかには、Pink Floydの音楽はプログレッシヴ・ロックではないという人もいますが、プログレッシヴ・ロックであるかないかは、自分にとってはどうでもいいことです。
初期のサイケデリック調のものからスペイシーなもの、ブルーズ・フィーリングにあふれたもの、そしてロック・オペラともいえる『The Wall』プロジェクトまで、彼らの音楽は少しずつ肌触りを変えてきましたが、少なくともPink Floydの音楽にはいつも唄があり、メロディがあり、それを奏でる人間、聴く人間がいました。それが自分にとっては重要なのです。
そして、それらの根の部分を支えていたのは、やはりRogerではないかと思うのです。
RogerがいなくなったあとのPink Floydのアルバムが非常にハイクオリティなPink Floydのコピーに聴こえてしまうのは、やはりRogerがいないからでしょう。聴こえてくる音はたしかにPink Floydなのに、大事な部分でPink Floydではないように感じるのです。
もちろん、ひとつの音楽としてはよいものなのですが。
それに対して、Pink Floyd脱退後初のソロ・アルバムとなるRogerのこの作品は、曲自体はそれほどPink Floyd的ではないのに、明らかにPink Floydの匂いがします。音づくりや曲づくりの面で『the Final Cut』との類似点が多く、そのためともいえますが、それよりもやはり、RogerこそがSyd Barret(シド・バレット)以後のPink Floydを性格づけていたということのほうが強いでしょう。
かといって、このアルバムで聴かれるのは、プログレッシヴ・ロックではありません。スタイルとしてのプログレッシヴ・ロック、あるいはPink Floyd的な音楽は、David Gilmour(デヴィッド・ギルモア)が、自身が中心となったPink Floydに引き継ぎました。そしてRogerのアルバムには、プログレッシヴ・ロックというスタイルの裏側に流れ続けていたPink Floydの「唄」が引き継がれました。
アルバム『the Final Cut』がリリースされたとき、Rogerのことを「母体回帰願望の強い、甘ったれたペシミスト」と切り捨てたのは、当時の雑誌『Fool's Mate』ではなかったかと思いますが、たしかにそういうところは、あるかもしれません。でも、それのどこがいけないのでしょうか。誰がなんといおうと、自分は彼の声が、彼の唄が、好きです。
Eric Clapton(エリック・クラプトン)やMichael Kamen(マイケル・ケイメン)、David Sanborn(デヴィッド・サンボーン)などの豪華なゲストの参加は、たいして重要ではありません。それよりも、Rogerが、Rogerの曲を唄っていることが重要だといえます。
ブルージーな曲、ソウル風のコーラスが入った曲、そしてメロウな曲。さまざまなSEと深く沈みこんだRogerの声。Pink Floydの『the Final Cut』と双子の片割れともとれるこのアルバムは、社会とうまく折り合いをつけることに苦労し疲れている人の心に共感を運んでくれるのではないでしょうか。