1: ALL THOSE YEARS
2: SO YOU RAN
3: DREAMIN'
4: DARK AND STORMY
5: STAND UP
6: FAST TALK
7: TOO MUCH IN LOVE
8: JOANNE
9: I CALL IT LOVE
produced by BARRY GOUDREAU
co-produced by LENNIE PETZE
Orion the Hunter are;
FRAN COSMO: lead vocal, phased guitar
BARRY GOUDREAU: rhythm, slide, 12 strings, lead guitar and vocals
BRUCE SMITH: bass, vocals
MICHAEL DE ROSIER: drums
additional musicians;
JOHN SCHULLER: oberheim organ and mellotron
PETER WOOD: memory moog, prophet and piano
JIMMY BRAELOWER: simmons programming
STEVE BAKER: piano
BRAD DELP: backing vocals
LENNIE PETZE: chuka chuka guitar
1980年代に流行した、Journey(ジャーニー)やToto(トト)、REO Speedwagon(アール・イー・オー・スピードワゴン)、Night Ranger(ナイト・レンジャー)などを中心にしたアメリカの産業ロックに対して、当時プログレッシヴ・ロックやユーロ・ロックの熱心なファンだった学生の自分は、どちらかというと否定的な意識を持っていました。いかにも「売るため」の姿勢に満ち溢れたメロディとアレンジが、あまりにもウソ臭くて嫌だったのです。
でも、30代もなかばを迎えたいまの自分は、これらの音楽を意外と素直に聴けるようになっていました。たしかに「売るぞ売るぞ」的な部分はいまでも多少、気になったりはしますが、それらの曲が持つメロディは、純粋に美しいなと感じることもできるようになったからです。
元をただせばアメリカの産業ロックは、Boston(ボストン)やStyx(スティックス)などのアメリカン・プログレッシヴから派生してきたもの。その根底には、ヨーロッパ的なものへの憧れとメロディ指向があったのだと思います。その点が、当時の日本の音楽ファンにもアピールしたのかもしれません。
そんな産業ロック/アメリカン・プログレッシヴのなかでも、もっともポピュラリティを持ち、ヒット曲もあり、それでいて当時から「どうせ産業ロックじゃん」と馬鹿にされることのなかったグループがBostonでしょう。
Bostonは、アメリカン・ロックらしい明るさを持ちながらも、スペイシーで広がりのある音空間を表現していました。アメリカの頭脳が結集するといわれるマサチューセッツ工科大学出身のリーダー、Tom Sholz(トム・ショルツ)による、計算された曲の展開と、アルバムとしての構成力の高さを誇っていました。バンドという形態ではありましたが、リーダーであるTomの神経が隅々まで行き渡ったグループだったのだと思います。
その点に重苦しさを感じたのか、あるいはなかなか活動しないBostonにしびれを切らしたのか、Bostonのセカンド・ギタリスト、Barry Goudreau(バリー・ゴードリュー)が結成した産業ロック・グループが、Orion the Hunter(オリオン・ザ・ハンター)です。
いかにもアメリカンな、ポップでメロウなメロディを持ったこのグループからは、難しいことは考えず、ともかく楽しく、そして少しロマンティックにロックしようという気持ちが感じられます。
ただ、Bostonにくらべると、アルバムとしても、個別の曲としても、練り方が足りない印象はあります。なんとなくよいのだけど、もうひとつ心に響かないのです。そのためか、アルバム1枚を出してグループは解散してしまったようです。
けっきょく、資料的な意味合い以上の存在感を打ち出せなかったグループだと思いますが、こういったアメリカン・ロックが好きな人には愛すべき音楽でしょう。