registrato dal vivo Genova il 9 Ottobre 1998
al Teatro Politeama Genovese
Vittorio De Scalzi: voce e tastiere
Andrea Maddalone: voce e chitarra
Alfio Vitanza: voce e batteria
Mauro Sposito: voce e chitarra
Roberto Tiranti: voce e basso
New Trolls(ニュー・トロルス)本体の活動は最近伝わってきませんが、そのかわり、中心メンバーであるVittorio De Scalzi(ヴィットリオ・デ・スカルツィ)によるNew Trollsのコピー・バンド(?)、La storia dei New Trolls(ラ・ストーリア・デイ・ニュー・トロルス)が地道に活動しているようです。いまのところ2枚のアルバムがリリースされていますが、どちらもライヴ盤で、New Trollsの懐かしい曲が再現されています。
2枚のライヴのうち、一般的(プログレッシヴ・ファン的?)には「Concerto Grosso」をオーケストラ入りでライヴで再現した『Concerto Grosso Live』のほうが人気が高いようですが、自分としてはNew Trollsの「歌もの」を再現したこちらのライヴのほうが、圧倒的に好ましいです。
基本的にはコーラス・ワークを重視したポップス・グループのNew Trollsは、1970年代に一時、かなりプログレッシヴ寄りのグループになりました。その「プログレ期」の象徴ともいえるのが「Concerto Grosso」で、『Concerto Grosso Live』は「プログレ期のNew Trolls」を再現したものなわけですが、こちらのライヴは「プログレ期」前後の、New Trolls本来の姿である「ポップス期」の再現になっています。そして、New Trollsの持つイタリアらしいメロディの美しさ、ヴォーカリゼーションの素晴らしさを存分に楽しめるのは、『Concerto Grosso Live』のほうではなく、間違いなくこちらのライヴ盤です。
オープニングからしてセカンド・アルバム『New Trolls』のトップを飾るドラマティック・ポップ・チューンの「Una miniera」で、この時点ですっかり引き込まれてしまいます。デヴュー・アルバム『Senza orario senza bandiera』に収録されたおなじみの「Signore, io sono irish」も、ロマンティックな輝きを保っています。
こういった、初期のころの曲が魅力をまったく失っていないのが素晴らしいです。また、「プログレ期」を過ぎたあとのポップス作品になると明るさと軽やかさが加わり、重厚感のあった初期のころのポップスとはまた違った美しさを聴かせ、これまた魅力的です。
M2「Quella carezza della sera」のちからの抜けた感じは素直に心に響くし、M4「Ti ricordi Joe」のコーラス・ワークもNew Trollsらしい魅力を存分に味あわせてくれます。
M7「Visioni」では、わざわざイントロの最初のほうで古い演奏のテープを流し、そこにバンドの生演奏がかぶさっていく趣向がとられています。
M8「Il treno」は後期の名作『FS』に収録された曲。スタジオ盤では蒸気機関車のSEが使われていましたが、ライヴではエレキ・ギターとエコー・マシーンなどを使って代替しています。けっこう蒸気音ぽい感じが出ていて、上手に演奏されています。もともとドラマティックな曲ですが、ライヴでもスケール感のある演奏と歌が感動的に響きます。
続くM9「Aldebaran」のすがすがしい美しさも心地よく、あらためて「いい曲だなぁ」と感じます。
New Trollsのアルバムをあらためて聴いてみると、全体的に「プログレ期」以外のほうが曲自体のクオリティが高いように思います。日本では「プログレッシヴ・グループ」の印象が強いNew Trollsですが、エヴァーグリーンな品質を内包しているのは、じつは「ポップス期」の曲のほうではないでしょうか。『Concerto Grosso Live』のほうは聴いていて「旬を過ぎた」印象を受けたのですが、こちらのライヴに収録された曲はどれもまだみずみずしさを保っているように感じます。
プログレッシヴ・ロックのファンではなく、イタリアン・ポップスのファンに愛聴してもらいたい、とてもいいライヴ盤だと思います。