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SANREMO 2000 (2000年)

   サンレモ2000
    (EMI MUSIC ITALY 7243 52541324 / イタリア盤CD)



jacket photo   1: CHIEDI QUELLO CHE VUOI / DAVIDE DE MARINIS
  2: IN BIANCO E NERO / CARMEN CONSOLI
  3: SEMPLICE SAI / JENNY B
  4: IL TIMIDO UBRIACO / MAX GAZZE'
  5: OGNI ORA / B.A.U.
  6: FUTURO COME TE / MARIELLA NAVA e AMEDEO MINGHI
  7: STRADE / TIROMANCINO
  8: LE MARGHERITE / MARJORIE BIOND
  9: OGNUNO PER SE' / ERREDIEFFE
 10: TUTTI I MIEI SBAGLI / SUBSONICA
 11: E IO CI PENSO ANCORA / ENRICO SOGNATO
 12: SENTIMENTO / AVION TRAVEL
 13: FAI LA TUA VITA / CLAUDIO FIORI
 14: LA CROCE / ALESSIO BONOMO
 15: GECHI E VAMPIRI / GERARDINA TROVATO
 16: NORD-EST / ANDREA MAZZACAVALLO
 17: PASSIONE / LUCIANO PAVAROTTI
 18: BEAUTIFUL THAT WAY / NOA
 19: MESECINA/MOONLIGHT / GORAN BREGOVICH


SANREMO MILLENNIUM
(EMI MUSIC ITALY 7243 52541423)
jacket photo   1: RADIO GA GA / QUEEN
  2: SHIE'S THE ONE / ROBBIE WILLIAMS
  3: THE BEST / TINA TURNER
  4: RUSSIANS / STING
  5: SHOCK THE MONKEY / PETER GABRIEL
  6: CHARLIE BIG POTATO / SKUNK ANANSIE
  7: SAY YOU'LL BE THERE / SPICE GIRLS
  8: THINKING OF YOU / LENNY KRAVITS
  9: LIFT ME UP / GERI HALIWELL
 10: WHERE I'M HEADED / LENE MARLIN
 11: UNCHAIN MY HEART / JOE COCKER
 12: NEED YOU TONIGHT / INXS
 13: I'LL FLY FOR YOU / SPANDAU BALLET
 14: WILD BOYS / DURAN DURAN
 15: ENJOY THE SILENCE / DEPECHE MODE
 16: ALL NIGHT LONG / LIONEL RICHIE
 17: NOTHING COMPARES 2 U / SINEAD O'CONNOR
 18: BUSINDRE REEL / HEVIA







 2000年のサンレモ音楽祭参加曲を集めたCDは、Warner Fonitによる1枚ものと、EMI Italyによる2枚組の2種類があります。EMI盤の方は2枚組とはいっても、この年のサンレモ参加曲が収められているのは1枚のみで、もう1枚のほうはイタリア以外の国からのゲスト曲などが収録されたミレニアム記念盤となっています。
 全体的な印象としてはWarner Fonit盤のほうが自分好みの曲が多いのですが、EMI盤には2000年のサンレモ優勝曲、新人部門優勝曲が収録されているのがポイントでしょうか。

 Davide De Marinis(ダヴィデ・デ・マリニス)はサンレモ出場前から1999年にリリースされたアルバム『Quello Che Ho』がチャートの上位に入るなど、新人とはいえ前評判が高かったようです。ちょっと粘りのある声はラテン・ポップの歌手的にも感じますが、メロディの美しい軽やかなポップスが聴けます。オーケストレーションもあまりでしゃばることなく、さわやかな哀愁味を添えています。

 Carmen Consoli(カルメン・コンソーリ)は、ソウルフルなヴォーカルが風格を感じさせます。ロック・フィーリングを持ちながらもコケティッシュな魅力があり、かといって可愛いだけの女性シンガーではない実力があります。ただ、もう少し迫力があってもいいかな。

 Jenny B(ジェンニ・ビー)は新人部門の優勝者です。新人とはいえ、ヴェテラン・ジャズ・ヴォーカリストのような迫力ある歌唱が特徴的です。いくぶんしわがれた低めの声が、歌に表情と奥行きを感じさせます。曲想もアメリカの女性ジャズ・ヴォーカルのようで、その点でそれほどイタリア的ではありませんが、なかなかソウルフルでメロウなバラードです。

 Max Gazze'(マックス・ガッゼ)の曲はむかしのエレポップ的なアレンジが、ある意味で可愛らしいです。どことなく『Orizzonti Perduti』のころのFranco Battiato(フランコ・バッティアート)をちょっとだけ思い出しました。
 ただ、こういったアレンジは、自分は苦手です。メロディはポップで柔らかい美しさがあるだけに、個人的には残念です。

 B.A.U.(ビー・アー・ウー。それともバウと読むのでしょうか)の曲は、ちょっとおしゃれで抑え目なAメロから、一気に盛り上がるサビへ入る展開が、いかにもイタリアン・ポップス的です。ここで聴かれるような甘えた感じの女性ヴォーカルは好きではないのですが、曲的にはそこそこドラマティックでよいのではないでしょうか。イタリアン女性シンガーが歌いそうな、ある意味で典型的ともいえる曲です。

 Mariella Nava / Amedeo Minghi(マリエッラ・ナーヴァ/アメデオ・ミンギ)によるデュエットは、曲調的にはかなり地味ですが、Amedeoらしいおだやかなキーボード・オーケストレーションと流れるようなメロディが心地よい曲です。ヴォーカル的にはMariellaのほうが強い感じがしますが、艶のある美しい声だからいいでしょう。途中で入るふたりの語り風の掛け合いも、人々が行き交うイタリアの街角を思わせるかのようで、どこかほほえましく、優しい気持ちにさせます。

 Tiromancino(ティロマンチーノ)の曲は、イントロの美しいアコースティック・ギターの音が印象的です。スクラッチなどが効果音的に使われ、いくぶんラップ的な展開もしますが、メロディやバックの演奏が非常になだらかで、イタリアらしさを感じさせます。さりげない優しさを漂わせたラップ・ミュージックといった感じでしょうか。

 Marjorie Biondo(マルジョリエ・ビオンド)の曲もスローなロック・バラードですが、ヴォーカルが演奏に、音量の面で負けています。歌い方には特徴を出そうという意識が見えて、そういう点では頑張ってほしいのですが、声量不足が残念です。とくにサビでは、もっと瞬発力を見せてほしいです。女性ヴォーカルが好きな人には、これはこれでいいのでしょうけど。

 Erredieffe(エッレディエッフェ)はWarner Fonit盤にも収録されているのですが、イタリアン・シンガーとしての必然性といったものが感じられず、個人的には完全にバツです。アメリカの女性ソウル・グループをコピーしただけにしか思えません。こんな曲をWarner Fonit盤とEMI盤の両方に入れるより、どちらにも収録されなかったGianni Morandi(ジャンニ・モランディ)やPadre Alfonso Maria Parente(パードレ・アルフォンソ・マリア・パレンテ)を収録してほしかったです。

 Subsonica(スブソニカ)の曲は劇判風のイントロ、フィルターを通したヴォーカルなど、曲のオープニング部分に工夫があります。本編に入ると意外と普通のバラード系ポップ・ロックで、ちょっと肩透かしですが、最近の若いロック系カンタウトーレ的な匂いが強いといえます。イギリスっぽい曲想とアレンジは、ここ数年の流行なのでしょう。

 Enrico Sognato(エンリコ・ソニャート)の曲は、80年代ころのユーロ・ポップスをちょっと思い起こさせます。A-Ha(アー・ハー)やABCなどが流行っていたころのノスタルジーを感じます。さわやかでポップ、そこはかとない哀愁味、なんとなく安っぽいアレンジがとてもヨーロッパ的です。

 Avion Travel(アヴィオン・トラヴェル)は、正式にはPiccola Orchestra Avion Travel(ピッコラ・オルケストラ・アヴィオン・トラヴェル)といいます。2000年のサンレモ音楽祭で見事優勝に輝いたのは彼らです。
 イタリアン・ポップスというにはちょっと毛色の違う、まるで映画音楽のような独特のロマンティシズムとセンチメンタリズムを持った音楽です。古い時代のダンス音楽のような、ノスタルジーと華麗さが入り混じった、不思議な音楽です。

 Claudio Fiori(クラウディオ・フィオーリ)は、このアルバムに収録されているなかでは、もっとも正統的なイタリアン・シンガーといえるでしょう。たしかな歌唱、張りと声量のある声、流麗なメロディと、非常にオーソドックスなバラードを歌います。この曲を聴いていて、Aleandro Baldi(アレアンドロ・バルディ)や、1998年のサンレモ音楽祭で新人部門の3位に入ったLuca Sepe(ルーカ・セーペ)などが思い浮かびました。

 Alessio Bonomo(アレッシオ・ボノーモ)は、歌というよりは語りなんでしょうか。バックの演奏は1980年代のブリティッシュ・オルタナティブやニューウェーブのようで、安っぽい打ち込みドラムと引きずるようなベース、粘っこいギターなど、ある意味で懐かしいのですが、いまさらこんな音楽をされてもなぁというのが正直なところです。

 Gerardina Trovato(ジェラルディナ・トロヴァート)はトラッド・シンガーぽい声が熱いラテンの血を感じさせる女性です。ポルトガルの音楽などを思わせるガット・ギターがアクセントとして聴いていますが、たとえバックの演奏がなくても、本人の歌だけで充分に聴かせきるであろうと思わせるだけの力量を感じます。もう少し声量があれば、さらに風格あるシンガーになるだろうと思うのですが、そうなってしまうと、もはやポップス・シンガーではなくなってしまうのかも。

 Andrea Mazzacavallo(アンドレア・マッツァカヴァッロ)はWarner Fonit盤にも収録されていますが、ちょっと不思議なおもしろさと魅力を持った曲を聴かせてくれます。あまりイタリア的ではないのですが、きっと本人は楽しんで歌っているんだろうなという感じが伝わってきます。今回の参加曲はちょっとコミカルですが、おおらかなメロディを持ったバラードを歌わせたら、意外とうまいんじゃないでしょうか。

 17曲め以降はサンレモ参加曲ではありません。Luciano Pavarotti(ルチアーノ・パヴァロッティ)は司会をしたので、特別に収められたのでしょう。Noa(ノア)とGoran Bregovich(ゴラン・ブレゴヴィク)はゲストで参加しました。
 また、ミレニアム記念盤のほうは『Sanremo Millennium』とタイトルがつけられ、Queen(クイーン)やDuran Duran(デュラン・デュラン)など、1983年から2000年までにゲスト参加したイタリア以外のアーティストの曲が収められています。

(2000.05.14)








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