2001年のサンレモ音楽祭参加曲を集めたオムニバスCDです。2種類リリースされたオムニバスのうちの1枚ですが、ビッグ部門優勝者のElisa(エリーザ)と新人部門優勝者のGazosa(ガゾーサ)の両方とも、こちらのUniversal盤に収録されています。
■ Alex Britti - Sono contento
もともとブルースなどが得意な人らしいですが、この曲はやわらかく暖かみのある歌声とアコースティック・ギターの音色が心地よい、おだやかなイタリアン・ポップスになっています。なだらかなメロディラインとオーケストレーションも美しく、どこかとぼけた感じもするような力の抜け方が魅力的です。
イギリス的な曲が多かったこの年のサンレモ参加曲のなかで、イタリアらしい雰囲気を持ったこの曲は、順位としてはビッグ部門7位と振るいませんでしたが、個人的には印象に残りました。最優秀作曲賞受賞曲。
■ Fabio Concato - Ciao Ninin
ヴェテラン・カンタウトーレのFabio Concato(ファビオ・コンカート)。彼の曲もイタリアらしいなだらかさを持っています。ほんのちょっとジャズ・バラード的な雰囲気も感じられますが、それは少ししわがれぎみななかに独特の甘さと優しさのある彼の声のせいかもしれません。
地味ですがFabioらしい、おしゃれで奥行きのある曲だと思います。ビッグ部門の9位にランクされたこの曲は、彼の奥様に捧げられたものだそうですが、そのせいで余計に暖かみが感じられるのかもしれません。
■ Elisa - Luce (Tramonti a nord est)
2001年のビッグ部門優勝曲。Elisa(エリーザ)はずっと英語で歌ってきていたようで、英米風な曲がもともとの持ち味のようですが、今回はイタリア語で歌っています。
いくぶんイギリス風、アイリッシュ・ポップス風な雰囲気のある曲です。最優秀歌唱賞を受賞しただけあり、好き嫌いは別にして、歌にはちからと個性があると思います。
■ Sonique - Sky
Sonique(ソニーク)はこの年のサンレモ参加者ではないのですが、なぜ収録されたのでしょうか。というか、この人(グループ?)はいったい何者なのでしょうか。英語で歌っているようだし、曲もイギリス風なので、イタリアの人ではないのかもしれません。
■ Carlotta - Promessa
新人部門5位。
ラウドな打ち込みのリズム、わざとらしいデジタリックなストリングス・アレンジ、多用されるSE、強調されたリズム。こういうタイプの曲は、個人的には苦手です。ヴォーカルにもっと個性があれば、もう少し「歌」として聴けるかもしれないのですが、バックのにぎやかさに埋没していると思います。
■ Jenny B - Anche tu
2000年の新人部門優勝者。今年はビッグ部門で参加し、6位につけました。
ブルーズ・ソウル系のヴォーカルはあいかわらずうまく、ヴォーカリストとしての力を着実につけていると感じます。イタリアというよりはアメリカのうまい女性ヴォーカリストに印象が近い声と歌い方ですが、今回は曲をGiancarlo Golzi(ジァンカルロ・ゴルツィ)とPiero Cassano(ピエロ・カッサーノ)というMatia Bazar(マティア・バザール)のソングライター・コンビが提供しているからか、イタリア的なおおらかなメロディとなめらかな展開を持った曲になっており、その曲と彼女のヴォーカルがいい具合にマッチしています。
■ Kelly Joyce - Vivre la vie
この人もサンレモ参加者ではありません。ゲスト出演でもしたんでしょうか。フランス語で歌っているようですが、とくにどうといったことのない、ちょっと古い感じのロックです。
■ Velvet - Nascosto dietro un vetro
新人部門12位。
むかしの青春歌謡的なさわやかさがあります。キーボードによるオーケストレーションはちょっとセンスが悪いかも。しかし、青草の香る草原で追いかけっこをする若い恋人同士を見るような、いまとなっては少し恥ずかしい青臭い若さと明るさが感じられ、ちょっとばかし微笑ましいです。
■ Francesco Renga - Raccontami...
元Timoria(ティモーリア)のヴォーカリストで、昨年ソロ・デヴューしました。新人部門での参加ですが、シンガーとしてのキャリア自体は長いこともあり、安定したヴォーカルを聴かせます。そのためか、新人部門6位につけました。
いくぶん粘り気のある歌声には艶と奥行きがあり、ヴォーカリストとしての個性も充分です。今回の参加曲は展開のゆるやかなバラードですが、それを飽きさせずに聴かせるだけのちからがあります。ロック・ヴォーカリスト的な歌い方もところどころに見えますが、それが色気にもなっています。
■ Shivaree - Goodnight Moon
この人もサンレモ参加者ではありません。これまたアンニュイで古い感じの、ちょっとサイケデリックがかったポップ・ロックを英語で歌っています。どういう意図でこのCDに収録されたのか、よくわかりません。
■ Roberto Angelini - Il sig. domani
新人部門10位と振るいませんでしたが、個人的にはこの人とFranceso Renga(フランチェスコ・レンガ)が、新人のなかでは気になりました。
アコースティック・ギターの透明な音とRoberto Angelini(ロベルト・アンジェリーニ)の落ち着いた声が、どこかふわふわとした独特な浮遊感をかもし出します。イギリスの耽美派ニューウェーヴ的な印象がそこはかとなく漂っていて、個性的な美しさという点で際立っていると思います。
■ Roman Keating - The Way You Make Me Feel
この人もサンレモ参加者ではありません。アメリカの土臭いフォーク・ソングといった感じの曲です。こういった曲は嫌いじゃないのですが、なぜサンレモ音楽祭のCDに収録されているのか不明です。
■ Quintorigo - Bentivoglio angelina (Kon tutto il mio amaro)
ビッグ部門15位(下から2番目)と、順位はまったく振るわなかったのですが、前回に続いて最優秀編曲賞は受賞したという、評価されているんだかされていないんだかよくわからないグループ。
イギリスのニューウェーヴやパンク的な音づくりやメロディのなかに、Avion Travel(アヴィオン・トラヴェル)のような南欧テイストをもった演劇的な場面が入ったりと、構成・展開力に独特なポテンシャルを持っています。ポップスやロックといった範疇に収まらない、ミクスチャー的な音楽です。
■ Francesco e Giada - Turuturu
新人部門3位になった男女デュオ。
素直なメロディ展開、すがすがしい女性ヴォーカルとやさしげな男性ヴォーカルのきれいなハーモニー、フォークソング的な曲調など、微笑ましさいっぱいです。歌がうますぎないところが、かえってこういった曲調にはあっていると思います。
■ Gazosa - Stai con me (Forever)
新人部門優勝。
英米の少し前のニューウェーヴ・ロック的な曲調です。女性ヴォーカルは、ヴォーカリストとしては力量不足ですし、曲や演奏にも、これといって強く魅かれるところはありません。ありがちな歌と曲だと思います。なぜ、この曲が優勝?
■ Moby - Porcelain
サンレモ参加曲ではありません。ウィスパー風の男性ヴォーカル、デジタルなリズム・アレンジ、厚めのキーボード・オーケストレーションなど、いわゆるクラブ系の曲というのでしょうか。とくにどうということもない曲だと思いますが、こういうので癒されちゃう人もいるんでしょうね。
■ Placebo - Slave To The Wage
CDの最後を飾る曲も、やはりサンレモ参加曲ではありません。これまた古いイギリスのニューウェーヴ的なロック。ニューロマンティック・ブームのころのことをちょっと思い出してしまいました。なぜ、このCDに収録されたんでしょう?
このCDで個人的に気に入ったのは、Alex Britti、Franceso Renga、Roberto Angeliniの3人くらい。なんか、不作だなぁという感じです。