executive producer: Marco Zischka
mastered by Simone Borioni
コンペティション部門、新人部門ともに2003年サンレモ音楽祭の優勝曲を収録できなかったUniversaLのコンピレーション。さらに、全体に成績上位の曲もWarner盤に持っていかれてしまい、なんとなくさびしい感じの収録曲になっています。ちなみに2003年のサンレモ参加曲のなかでFausto Leali(ファウスト・レアーリ)の「Eri tu」だけがUniversal盤にもWarner盤にも収録されていません。
それでは、Universal盤に収録された曲についての印象を。
■ ALEX BRITTI / 7000 CAFFE'コンペティション部門2位。張り詰めたアコースティック・ギターの音色が印象的なイントロ。歌メロやブラスのアレンジにちょっとアメリカの泥臭いフォークを思わせながらも、サビにはやはりイタリアを感じます。からっとした感じが好ましいですね。
■ ANTONELLA RUGGIERO / DI UN AMOREコンペティション部門9位。どことなくミステリアスな雰囲気をただよわせた、ゆったりとしたメロディと展開。広がりのあるキーボード・オーケストレーションのうえに、いまだ衰えぬ伸びやかななヴォーカルが乗ります。一瞬、ほんのちょっとだけ不協和音ぽく聞こえるコード・プログレッションが個人的にはいまひとつなのですが、それはそれで神秘的な印象を与えているともいえるかも。
■ EIFFEL 65 / QUELLI CHE NON HANNO ETA'コンペティション部門15位。派手な印象を持ったダンサブルなポップ・ミュージック。テクノ・ダンスなシンセサイザーのアレンジは、自分はあまり好みじゃありませんが、ユーロ・ディスコ・ミュージックとしては悪くないんじゃないでしょうか。単純な曲ではあります。サンレモ向きではありませんね。
■ LITTLE TONY & BOBBY SOLO / NON SI CRESCE MAIコンペティション部門16位。なめらかなメロディを持ったポップス。古いムード・ミュージック風な印象もあります。軽い感じで聴きやすいけれど、メロディ的に印象的なところはなく、なんとなく耳あたりがいいだけの音楽に聞こえてしまいます。やわらかなヴォーカルも、悪くはないけれど、個性に乏しいですね。全体的に標準的というか、平均点マイナスαといった感じ。
■ NEGRITA / TONIGHTコンペティション部門18位。若いロック・ファンに人気のあるグループだったと思います。サンレモ音楽祭とはちょっとイメージが合わない気がします。今回の参加曲も重い感じのロック/ニューウェーヴ系で、やっぱり順位も低かったですね。ギターのアレンジとか、そんなに悪い感じではないのだけど、ヴォーカルの魅力がちょっと低いかな。
■ SERGIO CAMMARIERE / TUTTO QUELLO CHE UN UOMOコンペティション部門3位、ミア・マルティーニ賞1位、最優秀作曲賞。どちらかというとポップス系ではなくジャズ系の人です。この曲も大人の渋さと哀愁をたたえたスロー・ジャズ・バラード。ミュートをかませたトランペットやウッドベースの響き、味わいのあるヴォーカル、やわらかなオーケストレーション、どれをとっても都会の夜とウィスキーが似合いそうな、落ち着いた空気を漂わせています。
■ ANNA TATANGELO e FEDERICO STRAGA / VOLERE VOLAREコンペティション部門17位。Anna Tatangelo(アンナ・タタンジェロ)は2002年のサンレモ音楽祭新人部門優勝者。今回は、名前を聞くのはおひさしぶりな感じのFederico Straga(フェデリコ・ストラーガ)と組んでの参加です。Annaってたしか、まだ16歳だったと思います。2002年の優勝曲では15歳(当時)と思えない落ち着きと貫禄を持った歌い方をすると感じましたが、今回は、16歳にしてはやはり貫禄がありますが、それでも「やっぱり16歳かな」と感じるところもあり、ある意味「年齢にあった歌い方」をしている気がします。大人(といっても、まだ若手なはず)のFedericoと一緒に歌っているから、余計にそう思うのかもしれませんが。ちなみにこの曲はカンタウトーレとして自身のアルバムも出しているBungaro(ブンガロ)が提供しているようです。
■ IVA ZANICCHI / FOSSI UN TANGOコンペティション部門20位。ヴェテランらしい貫禄のある声と歌い方。アコーディオンを導入し、南欧風の哀愁を漂わせた曲で、個人的にはけっこう好きなタイプですが、いまの時代からすれば古臭い感じともいえます。それもあってかコンペティション部門最下位という不名誉な結果に終わっていますが、ほどよくアーティスティックで、けっして悪い曲じゃありません。もしこれがIva Zanicchi(イヴァ・ザニッキ)ではなくPiccola Orchestra Avion Travel(ピッコラ・オルケストラ・アヴィオン・トラヴェル)だったら、もっと上位にいったのかも。
■ AMEDEO MINGHI / SARA' UNA CANZONEコンペティション部門19位。最近のAmedeo Minghi(アメデオ・ミンギ)はサンレモに出るたんびに下位の成績に終わっていて、もう出ないほうがいいんじゃないかという気もします。今回も19位とふるいませんが、曲自体は、ゆったりしたヴォーカルラインと構成に厚いキーボード・オーケストレーションがかかるという、いつものAmedeoらしいものです。ここ何年か、歌メロ自体もアレンジ面での魅力も落ちつつあるAmedeoですが、この曲についてはなかなか聴かせる出来になっていると思います。
■ VERDIANA / CHI SEI NON LO SO新人部門4位。イントロで聴けるガット・ギターのやわらかいメロディが好ましいです。タイプとしてはLaura Pausini(ラウラ・パウジーニ)などに通じる正統派の女性ヴォーカルでしょうか。落ち着いたバラードで、いかにもイタリアン・ポップスらしい感じです。けっこう歌唱力もありますし、今後いい曲に恵まれれば人気が出るかもしれません。
■ FILIPPO MELORA / MI SENTO LIBERO新人部門16位。どことなくEros Ramazzotti(エロス・ラマゾッティ)を思わせる(?)、ちょっとクセのある感じの高めの声ですが、意外と伸びがあって、曲のタイプが個性に合えば味わい深くなりそうです。今回の曲はミディアム・スローなバラード系で、オルガンの音がノスタルジックだったりしますが、メロディや構成自体はそれほど魅力的じゃないというか、標準的な感じです。
■ MANUELA ZANIER / AMAMI新人部門12位。スケール感のあるメロディを持ったバラードなんだけど、なんかごちゃごちゃした印象を与える電子楽器のアレンジがいまいちに思います。それと、こういった曲を歌うには、声に伸びやかさが足りないかな。あんまり声が出ていない印象です。もっとヴォイス・トレーニングをしたほうがいいのではないかしら。
■ ROBERTO GIGLIO / CENTO COSE新人部門9位。ゲートをかけたアコースティック・ギターのストロークやドラムの音が、どうも違和感を感じてしまって自分にはいまいち。ミディアム・テンポでクリアな演奏なんだけど、なんか落ち着きません。曲自体は明るさとなだらかさがあって、軽やかなポップ・ミュージックとしてそれなりに楽しめるのに。飄々とした感じのヴォーカルも、こういった曲調にはあっているように思います。
■ ALLUNATI / CHIAMA DI NOTTE新人部門13位。けっこうおじさんぽい渋いヴォーカル。ピアノから始まる、ちょっとロマンティックでセンチメンタルな感じのバラードに、この声はけっこう合っています。Francesco Renga(フランチェスコ・レンガ)を小粒に、標準的にしたような感じでしょうか。ヴォーカルだけでなく、曲の構成やメロディも小粒で標準的な感じがして、それゆえ印象に残りにくいのが残念です。
■ PATRIZIA LAQUIDARA / LIVIDI E FIORI新人部門7位。きれいに澄んだ優しい声を持ったシンガー。この声にあった、女性シンガーらしいやわらかなメロディを持った曲です。アコーディオンの導入もあり、ほんのりとフォルクローレやトラッドの香りを漂わせつつ、なめらかなポップスとしての美しさとなじみやすさがあります。
■ GIANNI FIORELLINO / BASTAVA UN NIENTE新人部門5位。地元ナポリではアレンジャーなどでキャリアはけっこう長く、1999年のナポリ音楽祭では優勝者し、2002年にはサンレモ音楽祭の新人部門に参加して4位になったのですが、なぜか2003年のサンレモ音楽祭もコンペティション部門ではなく新人部門での参加となったGianni Fiorellino(ジァンニ・フィオレッリーノ)。以前はもっとナポリっぽくて、感じとしてはサンレモ音楽祭に参加する直前のGigi D'Alessio(ジジ・ダレッシォ)風だったのですが、Gigiと同じくサンレモに参加後はずいぶんとソフィスティケイトされたポップスになってしまいました。ほんのちょっとだけナポリ・テイストも感じられますが、最近のGigi以上にイタリア全土向けポップスといった感じです。きれいな曲なんだけど、あんまり個性が感じられません。
■ JACQUELINE FERRY / VICINA E LONTANA新人部門10位。ニューウェーブぽいニュアンスを持ったポップ・ロックでしょうか。Carmen Consoli(カルメン・コンソーリ)などに通じる音楽性をずっとずっと小粒にしたような印象です。ちょっとクセのあるヴォーカルは小悪魔風でよくはありますが、まだ個性という点では発展途上といった感じ。今後の精進しだいでは、次世代の女性ロック・シンガーとして人気が出るかもしれませんが、いまはまだつぼみといったところですね。