VINCENZO SPAMPINATO


E' SERA (1997年)

   ヴィンチェンツォ・スパンピナート / エ・セラ
    (LENGI MUSIC / MAGIC RECORD ITALIA RZ003L / イタリア盤CD)



jacket photo   1: CHE COSA VUOI CHE SIA
  2: RICORDI
  3: E' SERA
  4: << L >>
  5: ORLANDO
  6: LA MELA
  7: 2 MANI
  8: DO RE MI
  9: SPECCHIO SPECCHIO
 10: AUTUNNO
 11: DANZE STELLARI
 12: BATTI UN COLPO MARIA


produzione: Pippo Spampinato
arrangiamenti: Ruggero Cini, Gianfranco Lombardi, Rodolfo Grieco

testi e musiche: Vincenzo Spampinato

batteria: Tullio De Piscopo, Agostino Marangolo(Goblin)
basso: Julius Farmer, Fabio Pignatelli(Goblin)
chitarre: New Trolls, Massimo Luca, Luciano Ciccaglioni
tastiere: Roberto Colombo, Ruggero Cini, Gianfranco Lombardi, Stefano Pulga
fiati: Giorgio Baiocco, Giovanni Capriuolo, Giuliano Bernicchi
percussioni: Maurizio Preti
fisarmonica: Andrea Tosi, Gianni Zilioli
cori: Paola Orlandi







 CDの(P)表示は1997年になっていますが、収録されているのはもっと古い曲のようです。彼の正式なディスコグラフィには出てこないアルバムなので、たぶん古い曲を集めてリリースされたベスト盤ではないでしょうか。
 同年に大手BMG傘下のレーベルTringからリリースされたベスト盤『Il raccolto』とダブった曲はひとつもありません。音の感じも、まだポップスが穏やかだったころの肌触りです。
 また、アルバムのタイトル曲は1978年のFestivalbar(フェスティヴァルバール)参加曲で、第2位に輝いたものです。

 ちなみに、CD盤にもケースにも曲目は12曲しか書いていないのですが、実際にはM2「Ricordi」とM3「E' sera」の間にもう1曲、収録されています(タイトルはわかりません)。なので、正しくは13曲入りのCDです。また、M7の「2 Mani」はライブ収録のようです。

 Vincenzo Spampinato(ヴィンチェンツォ・スパンピナート)のデヴューは1970年代中旬のようですが、比較的最近まで活動を続けています。現時点で最新盤となるスタジオ作品『Judas』は1995年のリリースですし、1997年には先に触れたベスト盤『Il raccolto』をリリースしています。
 その後の活動は伝わってきませんが、イタリア本国にはファンクラブもあるので、地元シチリアでは地道に活動を続けているのではないかと思います。

 最近の作品ではポップかつ流れるような美しさを持ったメロディの、ある意味でオーソドックスなイタリアン・ポップスを聴かせてくれた彼ですが、アルバムのはしばし、録音や展開などといった細かいところにまで神経・配慮が行き届いた、ヴェテランらしい安定感と安らぎに満ちたもので、ぽっと出の新人などによる作品とのクオリティの違いを感じさせるに充分でした。
 しかし、デヴューから間もないころに録音されたと思われるこのアルバムの収録曲は、近作のようななだらかなポップスというよりは、多分にフォーク的な要素が強いといえます。声もまだ若く、やわらかい感じで、その歌を聴いていると、明るく暖かい春を思わせるような、甘い若草の匂いが風に運ばれてくる草原にいるような、おだやかで幸福な風景が浮かびます。

 この時期Vincenzoは、Alberto Fortis(アルベルト・フォルティス)やVasco Rossi(ヴァスコ・ロッシ)などと一緒にコンサートを行なっていたようですが、そういわれると初期のAlbertoと音楽性で共通点が感じられます。細く高めの声で若草の甘い香りがするようなフォーク的な歌は、Albertoのファースト・アルバムを思い起こさせます。
 ただ、Vincenzoの場合、Albertoほどに強い個性や癖がないので、Albertoよりも聴きやすいといえるでしょう。

 また、Albertoのファースト・アルバムはイタリア最高のプログレッシヴ・グループ、Premiata Forneria Marconi(プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ。PFM)が演奏し、Claudio Fabi(クラウディオ・ファビ)がプロデュースを担当していましたが、VincenzoのこのアルバムにもAlbertoのアルバムに負けない豪華な顔ぶれを見ることができます。
 ギターにはNew Trolls(ニュー・トロルス)がクレジットされ、Massimo Lucaの名前もあります。ベースにはGoblin(ゴブリン)のFabio Pignatelli(ファビオ・ピニャテッリ)、ドラムにはTulio De Piscopo(トゥリオ・デ・ピスコポ)とGoblinのAgostino Marangolo(アゴスティーノ・マランゴーロ)、キーボードにはRoberto Colombo(ロベルト・コロンボ)にStefano Pulga(ステファーノ・プルガ)、Gianfranco Lombardi(ジャンフランコ・ロンバルディ。アレンジも担当)と、そうそうたるメンバーです。したがって、演奏がいいのは当然です。

 もちろん、彼らはあくまでもバック・ミュージシャンとしての参加なので、途中で演奏が突然New TrollsやGoblin風になったりすることはありません。でも、どこかNew Trollsにも通じるようなポップさはあるし、アルバム最後の曲では、どことなくLe Orme(レ・オルメ)を思い出させたりもします。
 イタリアン・ポップスがイタリアン・ポップスらしかったころのポップスが、このアルバムにはあるのです。

 メジャー・レーベルからのディストリビュートがいまはなくなってしまったようで、なかなか手に入れるのが難しい彼のアルバムですが、自分が聴いたことのあるアルバムはどれも、自分が若いころに抱いていたイタリアへの憧れを思い出させてくれるようなものです。
 このままひっそりと消してしまうにはもったいないカンタウトーレだと思います。

(2000.09.16)








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