VINCENZO SPAMPINATO


KOKALOS.3 (2000年)

   ヴィンチェンツォ・スパンピナート / コカロス・トレ
    (LENGI MUSIC CD VSC0001L / イタリア盤CD)



jacket photo   1: VITTI NA CROZZA (tradizionale)
  2: ASPITTAMU U VENTU - con i Rondo Veneziano
  3: E VUI FURMITI ANCORA
  4: PIPPU PIRNACCHIU
  5: CIURI CIURI (tradizionale) - con Pippo Pattavina
  6: CI NI VOLI TEMPU
  7: TU VENI CCA'
  8: CHI NNI SAI?
  9: TERRA MIA
 10: VACCI LISCIU


produzione: Pippo Spampinato
realizzazione: Vincenzo Spampinato, Tuccio Fazzio
arrangiamenti, versi e musiche: Vincenzo Spampinato

Ninu Basili: Maranzano, quattara, friscalettu
Alfio Amore: tambureddu
Gaetano D'Angelo: sax, flauto traverso
Massimo Di Vecchio: pianoforte, tastiere, archi virtuali
Vincenzo Mancuso: chitarre, marango
Emilio Condorelli: congas, djembe', tamburi, digeridoo, likembe
Enzo Di Vita: batteria
Max Holder: basso, virtual fretles
Petra Scott: whistle, flauti
Enzo Chichili: virus, effetti elettronici
Toto' Palermo: u' carritteri

coro e voci: Lilla Costarelli, Antonella Leotta, Daniela Dea Licandro, Leo Di Caltabellotta

Rondo Veneziano diretti da Giambiero Reverberi







 前作『Judas』のリリースが1995年なので、オリジナル・アルバムとしては5年ぶりの新譜です。
 1992年リリースの前々作『L'amore nuovo』、それに前作『Judas』は大手レーベルのBMGから出ましたが、1997年のベスト盤『Il raccolto』をリリースしたBMG傘下のTringレーベルが倒産したことでけちがついたのか、今作は自身の所属するマネジメント・オフィス&レーベルであるLengi Musicからのリリースになりました。Lengi MusicのCDは大手の流通に乗っていないらしく、一般のCDショップで手に入れるのはちょっとばかし困難なのですが、いつも使っている海外のオンラインCDショップに無理をいって、シチリアのLengi Musicと直接交渉をして取り寄せてもらいました。

 前作『Judas』は、彼の作品のなかでは珍しくトラッド色が感じられるアルバムでしたが、本作では、よりトラッド色が強くなっています。しばらくはこの路線でいくのかもしれません。
 ちなみに、今回のアルバム・タイトルになっているKokalos(コカロス)というのは、古代のシチリア南西部にいた部族「シカーニ族」の王様の名前らしいです。曲のなかに「我はコカロスなり」みたいなことから始まる重々しいセリフが収録されています。シカーニ族についてはなにも知らないのですが、たぶん、古い時代に栄えた部族なのでしょう。
 また、アルバムのもうひとつのテーマは、大地への愛らしいです。このようなテーマからも、アルバムの肌触りが、よりトラッド的になったのでしょう。

 1976年にデヴューしたVincenzoは、最初のころこそフェスティヴァルバール(Festivalbar)で入賞したり、やはりデヴュー間もないAlberto Fortis(アルベルト・フォルティス)やVasco Rossi(ヴァスコ・ロッシ)などと大きなツアーに出かけたりと、それなりに存在感があったようですが、ここ10年ほどはすっかり地味な存在です。楽曲提供者としてRiccardo Fogli(リッカルド・フォッリ)のアルバムなどで名前を見かけることはありますが、カンタウトーレとしては、いまではほとんど無名に近いといえるかもしれません。
 しかし、やわらかく美しいメロディと暖かみのある声は魅力的で、初期のAlberto Fortisや中期以降のRiccardo Fogliなど、メロディアスで質感のあるポップスが好きな人には楽しめる要素が多いと思います。全体に作風は地味ですが、楽曲の端々までに細やかな神経が行き届いた、ヴェテランらしい安定感のある音楽が聴けます。とくにここ近作にその傾向が強く、自分にとってはお気に入りのカンタウトーレのひとりです。

 そんなVincenzoだからこそ、新譜リリースの情報を喜び、ショップに無理をいって特別に取り寄せてもらったのですが、今回のアルバムには近作ほどの完成度の高さ、安定感が感じられません。前作『Judas』ではエッセンスだったトラッド/ワールドミュージック風味が強く前面に出てきたことで、旧来のよさと今回の曲との間にバランスの悪さがあるようです。
 今後しばらくは、この方向を追求するのかもしれませんが、そうであるなら今作は、その過渡期、試行錯誤の段階にある作品といえそうです。

 旧来のよさを打ち消してしまっているもうひとつの原因は、リズムにあります。全体的にリズムが強調されたアレンジが施され、とくに、あまり洗練されていないうえに大きな音で録音されている打楽器が、Vincenzoの持つ声の魅力を覆い隠してしまっている部分が多々あるのです。メロディ自体は昔ながらの美しさを持ったものが多い分、余計にがさつなリズム・アレンジはいただけません。
 ただし、静かな曲、落ち着いた曲でのやわらかな美しさはまったく衰えておらず、Vincenzoらしさが充分に発揮されています。また、曲によっては初期のAngelo Branduardi(アンジェロ・ブランデュアルディ)のような優しさ、暖かさも感じられ、この色合いを上手に維持できれば、この方向性での今後も非常に楽しみになってきます。

 アルバムとしては多少バラけたところがあるし、うまく馴染んでいないアレンジもありますが、聴くほどに味を感じさせるヴォーカルは健在です。
 なお、1曲でRondo Veneziano(ロンド・ヴェネツィアーノ)が演奏を担当し、彼らならではのバロック・アレンジを聴かせてくれますが、アルバムのなかではちょっと浮いた感じがします。

(2001.03.18)








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