versi, musiche, arrangiamenti, realizzazione: Vincenzo Spampinato
registrazioni, mixaggi, editing, programazzione: Tuccio Fazzio
produzione: Pippo Spampinato
トップとエンディングが同じ「Tuttidiritti loop」という曲で、曲名どおりループ状になっています。イタリア語がわからないので想像するしかないのですが、おそらく前作『Kokalos.3』と同じように、なんらかのテーマを持ったある種のコンセプトアルバムではないかと思います。
M2「Articolo uno」では1980年代後半のテクノ/ニュー・ロマンティックのようなシンセサイザーの音が聞こえてきて、なんとなくHuman League(ヒューマン・リーグ)とかを思い出すと同時に「いったいどうしたんだ、Vincenzo?」と、ちょっと戸惑ったのですが、続くM3「Rataplan」では少し落ち着いて、ひと安心でした。でも、このM3も、これまでのVincenzo Spampinato(ヴィンチェンツォ・スパンピナート)の、どちらかというとなめらかなメロディ展開や構成から考えると、ちょっと異色かもしれません。シリアスで壮大な感じがあって、ドラマティックな曲です。
さらにM4「Onomatopea」は、左右のスピーカーをパンしながら「Bin」「Bush」「Boon」という言葉が聞こえてくるだけ。歌詞カードを見ると、Binはアルカイダのビン・ラディン、Bushはアメリカ大統領のジョージ・ブッシュのことのようです。こういう曲(ではないけれど)もはじめて。
このように、これまで自分が聴いたことのあるVincenzoのアルバムのなかではもっとも、というか、これまでにない実験的な要素を多く持ったアルバムになっています。
M5「Bella Don't Cry」にきてやっと、これまでのVincenzoらしい、やわらかなメロディと構成、そして暖かいヴォーカルが聴けます。やはり、こういう曲は安心して聴いていられます。といっても、他の実験的(?)な曲が安心して聴けないとか、あまりよくないということではなく、どれもなかなかのクオリティです。曲づくりや構成をきちんと考えて、すみずみまで気を配って制作されたアルバムだなと感じられます。
M6「Niente regali a natale」ではヘヴィなエレキ・ギターを中心にしたデジタル・ロックぽいの演奏にラップ風のヴォーカルが乗り、途中でソプラノのスキャットが入り、さらに「Oh Happy Day」や「White Christmas」がコラージュされと、この曲もかなり実験的です。
なんかすごいなと思っていると、おだやかなアコースティック・ギターのストロークで始まるM7「Samba dei pezzi di ricambio」で落ち着きを取り戻し、かと思ったらM8「Sex Travel」ではまたヘヴィなエレキ・ギターで始まるというように、聴き手にどんどん揺さぶりをかけます。
そうして少し気分が不安定になってきたところに流れてくるM9「Nuvola del perdono」。Patrizia Bulgari(パトリツィア・ブルガリ)という人とデュエットをしているこの曲は、ちょっとハリウッド産超大作ラヴ・ストーリー映画のテーマ曲ぽい雰囲気をたたえた、感動的でスケールの大きいバラードです。この曲の配置は、構成のうまさを感じさせます。
そして、1995年のアルバム『Judas』あたりから続く民俗音楽への興味を継承したM10「Arriveranno i nostri」やM11「E mi presero all'alba」、キーボード主体のシンフォニック&コズミックなM12「Questo e' il valzer」、どことなくアフリカのサバンナを思わせる(「ライオンキング」風?)M13「Quasi come cecco angiolieri」(この曲は途中で「Yellow Submarine」がコラージュされています)を経て、ディジャリドゥのようなイントロを持つM14〜M1「Tuttidiritti loop」のループへとつながります。
曲中や曲間にちりばめられたSEや、デジタル楽器の多様など、これまでのVincenzoのアルバムにはあまりなかった要素が多く詰まった、なかなかの意欲作です。Vincenzoにしては実験的な作風ですが、しかし持ち味であるなめらかさは失っていません。最初に聴いたときは「どうしたんだろう?」と思いましたが、聴き進めるにつれて音世界がなじんできます。よい作品だと思います。